2017年04月24日

新富裕層の研究――日本経済を変える新たな仕組み/加谷 珪一

 富裕層という言葉は,よく耳にするが,変化の激しい今の時代の中でその意味は大きく変わりつつある。それ自体は認識しているが,その具体的なものは何なのか,自分では全然理解できていなかった。それを理解するために本書を購入した。実際,現在起こっていることが詳細に書かれていて,大変勉強になった。私が参考になった点は,次の通りである。
・愛媛県松山市に本拠をかまえるエイトワンの創業者・大藪崇氏は,市内の道後温泉の宿泊施設の立て直しを皮切りに,今治タオルのショップや愛媛ミカンの販売など,地元・愛媛にこだわった事業を多数展開しています。地域密着型の実業家は珍しくありませんが,大藪氏の場合,事業の元手になった資金はすべて,彼がニート時代に株式投資で作ったという点で,非常に特徴的です。
・米アマゾンは,アプリを使って個人に荷物の配送を依頼するシステムを開発中と言われています。このシステムに登録した個人は,自分が移動する予定の地域に配送予定の商品が存在した場合,宅配業者の代わりにその商品を顧客に届け,配送料をもらうことができる仕組みです。
・日本人の平均年収は300万円台ですから,極論すると,平均的な日本人はほとんど所得税を納めていないことになります(あくまで所得税についてです。実際には地方税などがこれに加わりますので,無税ではありません)。いっぽう,年収が1,500万円を超えると所得税率は急激に上昇し,2,500万円超の人は34%もの税率となってしまいます。所得税について言えば,全体の4%にすぎない高所得者が,税金の半分を納めている計算になります。
・日本のGDPは過去20年間,ほぼ横ばいが続いています。日本にいるとあまりピンときませんが,同じ時期に諸外国のGDPは大幅に拡大しています。米国のGDPは約2.4倍に,フランスはドル換算で約2倍,ドイツも約1.8倍になりました。新興国もすべてを平均すると約2倍になります。つまり,日本は過去20年間に,相対的な経済規模が3分の2から半分に落ち込んでしまったわけです。
・株価がEPS(1株あたりの当期利益)の何倍なのかを示した指標のことを株式投資の世界では「PER(パー)」と呼びます。
・医師やパイロットを例に取り上げましたが,賃金が高く,ロボット化のコスト負担に耐えられる職種は,実はロボットや人工知能との親和性が高い可能性があるわけです。
・日本におけるGDPの大きさは,おおよそ500兆円です。このうち,もっとも大きな割合を占めるのが個人消費で,全体の約6割,金額にして300兆円ほどあります。個人消費の割合は豊かな先進国ほど高くなる傾向があり,米国は7割に達しています。いっぽう,途上国である中国は4割り程度しかありません。
・ラリー・ペイジ氏は,近い将来,人間は忙しく働く必要がなくなると主張しています。ペイジ氏は「私たちが幸せに生活するための資源は,それほど多くない。今の1%程度あれば十分であり,不必要な活動が,過剰な忙しさや環境破壊の原因になっている」と述べており,人工知能やロボット化が進めば,人間は今よりもずっと余裕を持って生活するようになるとの見解を示しています。いっぽう,もう1人のセルゲイ・ブリン氏は,まったく正反対の主張をしています。人間には限りない欲求があり,時間に余裕ができても,人々はそれ以上の娯楽を求めるため,労働力に対するニーズは変わらないとの立場です。
・日本における労働生産性は,OECD加盟34ヵ国中21位と低く,先進7ヵ国では最低です。労働生産性とは,労働によって生み出された付加価値を人数や労働時間で割ったものです。生産性が低いということは,儲からない事業を行っているか,労働が過大であるかのどちらか,あるいはその両方です。
・10年後の社会では,一般的なビジネスマンと起業家の境界線はきわめて曖昧になっているでしょう。会社の従業員としてプロジェクト管理の仕事をしながら,いっぽうでは外部リソースを使ってネット上で事業を運営するような人が出てきてもおかしくありません。実業家まではいかなくても,会社の仕事とは別に自身の特技を生かし,プライベートな時間には,クラウド・ソーシング経由で仕事を請け負うケースも珍しくなくなるでしょう。
・富裕層と呼べるのは純金融資産が1億円からです。その理由は,1億円の金融資産があれば,働かなくても,日本人の平均年収を稼ぐことができるからです。

 以上である。個人的には,著者が述べている未来像は,概ね正しいと感じる。10年後もやはり富裕層が存在し,多くの税金を納め,国を支えていることだろう。そして,大多数の自分のことしか考えない労働者は,どんなにテクノロジーが進化しても,AIが台頭してきても,時代の流れに翻弄され,一生を終えることだろう。しかし,今との大きな違いは,その選択が,その人自身に委ねられるという点だ。主体的に生きるか,それとも受動的に生かされるか。その選択は,その人自身の脳ミソが決める。グーグルの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの二人の話が印象的だ。人は,どこかで満足の到達点に達する生き物なのか,それとも,飽くなき欲求を満たすために,さらなる可能性を追い求める生き物なのか。著者は後者だろうと予測する。私も後者だと感じている。才能のある人も,才能のない人も,その人が持つ欲望の大きさはほとんど変わらないからだ。才能がないからといって,欲望がないとはいえない。いや,むしろ才能のない人のほうが欲求不満だったりする。自己顕示欲,優越感,満足感,自己陶酔感,そういう人間として心地よいものを人間は死ぬまで追い求める。そして,そのためにこの世界が存在しているとも言える。そういう意味では,「進歩」や「進化」は,ただのプロセスでしかないのだ。
 つまり,10年後も,20年後も根本的な人間の「在り方」は,変わらない。人間が,その本質を変えない限り。その存在理由を変えない限り。
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2017年04月23日

ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方/加谷 珪一

 株式投資を始めて数年が経過したが,投資手法が形式化してしまって,新しい挑戦を何も行っていない。そのため,何か自分の投資手法にブレイクスルーする方法はないかと本書を購入した。私が参考になった点は,次の通りである。
・安倍首相は2016年6月1日,2017年4月に予定されていた消費税10%への増税を,2019年10月まで2年半延期すると発表しました。消費税10%への増税延期はこれで2度目となります。
・人口減少社会においては,人々が近い地域に集まって暮らしたほうが,コストが安く効率的です。北海道は札幌に,東北は仙台に,九州は福岡に拠点集約されるというのが自然な流れでしょう。東京も1つの地方と考えれば,周辺地域から都心に人が集まってくることになります。
・米国はもともと孤立主義で,外国に高い関心を寄せる国ではありませんでしたが(モンロー主義=欧米相互不感症を唱えた第5代大統領モンローにちなむ),エネルギー自給がその傾向を加速させているようです。誰が大統領になるにせよ,こうした「引きこもり」的な感覚は,ますます顕著になりそうです。貿易も保護主義的になりますから,日本の輸出産業にとっては逆風となるかもしれません。
・過度に円安が進んだ場合,インフレが一気に進行しますから,実質的な債務は削減されます。つまり,インフレによって預金者から事実上,税金を徴収し,財政の穴埋めが行われるわけです。
・30歳の男性が60歳までに死亡する確率は7%です。また,40歳の男性が1年以内に死亡する確率はわずか0.1%,50歳になっても0.3%です。意外と低いというのが,多くの人の印象ではないでしょうか。病気については,日本の場合,国民皆保険制度が完備されていますから,保険料の滞納がない限りは,原則3割の自己負担で医者にかかることができます。重篤な病気の場合には,高額療養費製による補助もありますから,最終的にはさらに低い自己負担で治療することができるでしょう。
・かつてネットの黎明期には,ネットは既存の媒体から切り離されているので,新しい言論空間が形成されるのではないかと期待する声もありました。しかし現実にはそうはならず,ネットでもオールドメディアでも,同じ情報源によるニュースが流れるという状況になっています。
・ニュースの情報源がネット時代になっても大きく変わらず,特定のマスメディアが寡占的にニュースを提供しているということになると,メディアで流れる情報の質も基本的にあまり変化がないということが想像できます。実際,日本のメディアで流されるニュースは,今も昔もマス向けのものが中心であり,ニッチな情報は取り上げられないという特徴が顕著です。このような情報環境の場合,メディアにおける論調は,総じて予定調和的になりがちです。
・エコノミストやアナリストは,金融機関に所属していることがほとんどですから,基本的に勤務する金融機関の利益に沿った発言を行います。ただ外資系の金融機関は人材の出入りが激しいですから,学者や言論人への転身を狙って,知名度を上げることを最優先する人もいます。
・債券は一般的なレベルの投資家が購入することをあまり想定していません。流動性も低く,いざという時に換金しにくいですから,避けたほうがよいでしょう。それよりも,日本と海外の安定的な主力企業に分散投資する形にしておくことが,ポートフォリオとしては最適です。

 以上である。本書を読んで感じるのは,やはり世の中の変化に対して敏感でなければならないということだ。消費増税延期,人口減少社会,アメリカの保護主義,ネットによる情報社会,そして,投資。それらのものが渾然一体となって,社会は動いている。それらすべてに注意を払いながら,これからを生きていかなければならない。そして,それはある種の自己防衛とも言えるかもしれない。これからの時代は,これまでの流れに従って,他の人々と同様に動いていくよりも,自分自身で考え行動した人の方が成功する。それは,紛れもない真実だ。そのためには,日々学び,考え,自分自身にとっての最適解を探し求めるしかない。コンピュータが発達して,情報化社会になって,世の中がどんなに便利になっても,生きる難しさは,昔と何も変わっていない。私たちが試行錯誤して,その結果新しい時代が切り開かれることも,また同じだ。人間らしさというのは,まさにそこに存在するのだろう。
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2017年03月12日

実践版 三国志 ― 曹操・劉備・孫権、諸葛孔明……最強の人生戦略書に学ぶ/鈴木 博毅

 三国志の物語は,子供の頃から何度も見たり,聞いたりしているが,それが人生戦略書として解説されている。この本を読むと,三国志の歴史の理解が深まると同時に,各登場人物の考え方や戦略が理解できる。私が参考になったのは,次の通りである。
・のちに天下三分の計を発案したことで名高い諸葛孔明。彼はもともと現在の山東省(北京の南方)で181年に生まれます。父は幼い頃(孔明が6歳前後)に死去,叔父の諸葛玄に弟と共に育てられます。しかしその叔父も,孔明が16歳前後の時に死去。
・次の数年,どんなニーズ(力)が社会を支配するのか。次の数年,どんな技術(力)がビジネスを有利に導くのか。その答えを見つけて積極的に力と融合し,新時代の道を切り拓くべきなのです。
・のちに典韋という武人が曹操を守って壮絶な戦死をしたとき,曹操は涙を流します。彼の墓をつくり,曹操は丁寧に弔ったのです。人はその価値を認めてくれる人のために全力を尽くすと言われます。
・兄弟ゲンカで会社を分割した有名な例はダスラー兄弟でしょう。仲良く靴工場を経営していた兄弟は仲違いして,弟アドルフはアディダスを設立。兄のルドルフはプーマを設立して今日に至ります。
・勇気を持ち飛び込む者がいれば,尻込みする者の間抜けさは引き立ちます。別の表現をするなら,人が尻込みをする場面は,飛び込む者には絶好の機会なのです。
・感想で喉がカラカラになる砂漠では,誰もが水を渇望します。そこで自らの水を周囲に分け与える人は,多くの人の心を得るでしょう。地位や肩書を得たいと望み続けて手にした者は,途端にそれがない者を見下します。地位を得ても相手に劣等感を与えない者は,さらに多くの者から応援を得るでしょう。
・読者の皆さんにも,得意な分野が一つならずあることでしょう。しかし,得意と考えている分野ゆえにもっと優れた者を探さないことがあるのです。それが自らの誇りとするものであれば,なおさら修正は難しいものです。劉備の不遇時代は,トップ一人がすべてを兼任できないという現実も示しています。もし彼が,そのまま自分に疑いを持たずに過ごしたらどうなったか?赤壁の戦いは起こらず,三国志の時代は到来しなかったかもしれません。諸葛孔明を三顧の礼で迎えなければ,三国鼎立の策は世に出なかったからです。
。リーダーとは外界の翻訳者だとはよく言われます。集団に,トップが現状を定義して説明することが必要だからです。今,自分たちがどんな状態に置かれて何が求められているのか。何を打破する必要があるか,どんな戦いをすれば栄光と勝利が手に入るか。孫権の言葉には,翻訳者としての自らの手腕に自信が見てとれます。危機を前に,敵の姿を明確に説明できるなら,集団の力を倍加できます。このようなことができるリーダーは,危機さえチャンスに変えてしまうのです。
・本当に優れた者は,時間が経つに従い鋭利な刃物のように洗練されていきます。一方で,なまくらの刀は時間と共に切れ味が落ち,すぐに錆びついてしまうのです。
・ビジネスの重要な契約,履行の約束にも絶対はありません。安易な思い込みが想定外のトラブルにつながることはよくあります。
・組織に所属するとき,個人は強みを武器にできる。人生全体としては,弱みこそが勝敗を分ける。
・英雄たちを見ると,父が苦労した時期,実践で戦い抜いていた時期から一緒に従軍していた世代は,たいてい質実剛健に育っています。しかし成功を収めたあとしか見ていない世代は違います。知識偏重で華美を好み,浪費を気にかけない者に育つ傾向があるのです。
・機会を前に,あなた自身が立たなければ,機会とともに他の誰かに制せられるのです。機会は,あなたが手にしなければ他の誰かがそれを活かします。素敵な異性がいて,あなたが交際を申し込まねば,別の誰かがその人を恋人にします。時節や機会は一瞬です,まばたきほどの時間しかないこともあります。それを手にする勇気こそ,すべての英雄にもっとも共通する貴重な資質なのです。
・人間は誰しも自分が優先するものがあり,それに応じて決断しているということです。過去に,別れた人がいたならば,その人より優先する何かが私たちにあったのです。離れた会社,友人,場所,それらよりも優先したいものが必ず皆さんにあったのです。
・皆さんが今の人生を最高に気に入っているならば,何も変える必要はありません。しかし,必ずしも満足のいく日々でない場合,優先順位を変えることが必要です。
・英雄たちは,一度しかない生涯を全力で疾走して,歴史に足跡を残しました。その姿は,私たちの人生もまた,全力を賭けるに値するものだと教えてくれるのです。
・人は外見と中身が一致しないことも多い。そのため次の八つの方法で確認をする。質問をして返答を聞く,問い詰めたときの対応を見る,スパイを使い裏切りを誘う,ずけずけ訊ねる,金を管理させてみる,異性を近づける,困難な仕事を与える,酒を飲ませて酔い方を観察すること。

 以上である。個人的に,最も参考になったのは,「組織に所属するとき,個人は強みを武器にできる。人生全体としては,弱みこそが勝敗を分ける」だ。これはとても納得できた。いつも表裏のない自分というものを客観的に想定していたが,確かに組織における自分と個としての自分では,有効な技術というのは違っている。組織の中では,他人よりも優れた能力を要求され,それを発揮することで評価される。しかし,個においては,自分の短所や欠点が周囲から注目され,それが個の評価に大きく影響を与える。だから,自分自身の戦略としては,組織の中で能力を発揮し,さらに個においては,弱点を補強するということが重要なのだ。これは,とても重要な視点だと実感した。本書は,三国志の物語を解説しながら,ビジネスの考え方を伝えている。ビジネスに関する内容だけでも,十分説得力のある文章になっているが,それに三国志の登場人物および彼らが取った行動を例示して説明しているので,さらに説得力が増している。
 本書を読んで,ビジネスの考え方が学べただけでなく,三国志という物語自体にとても興味を持つことができた。
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2017年02月11日

株で勝ち続ける人の常識 負ける人の常識/加谷 珪一

 楽天証券で株取引を初めて,3年近くが過ぎた。さらなる自分のスキルアップのために,本書を購入した。私が参考になった点は,次のとおりである。
・プロの投資家最大の弱点は,どんな時でも投資を続けなければならないという点にある。投資信託はいつでも購入や解約ができる商品である。このため,いついかなる時でも,ファンドマネージャーは同じように運用を続けなければならない。「相場の調子がよくないのでしばらく休みます」とは言えないのだ。
・筆者は,ファンダメンタル分析で対象銘柄を絞り込んだ後,買うタイミングを判断する場面においてテクニカル分析を活用するのがよいと考えている。テクニカル分析手法を使えば,その銘柄が,投資家の心理として,買われすぎなのか,売られ過ぎなのか把握できる。
・各国が行っている経済対策は,いかにたくさんモノを作らせ,いかにたくさん消費させるかという2点について働きかけているにすぎない。GDPが大きくなれば,企業の売上げや利益も大きくなり,株価も上昇していくという単純な仕組みだ。
・現在の経済環境において,物価やGDPの横ばいが続くのは,尋常ではない。同じ期間,諸外国がGDPを2倍から3倍に拡大させていることを考えると,日本の特殊さがよくわかる。
・アベノミクスがスタートして以降,経済は順調に回復していると思われているが,GDPの中身を精査してみると,個人消費はあまり伸びていないことがわかる。むしろ,公共事業を中心に公的支出の伸びが多くなっており,政府支出に大きく依存した成長だとわかる。
・金利は今後の物価予想であり,言い換えれば,経済成長予測なのである。具体的に言うと,長期金利は,最終的にその国の名目GDPの成長率に収れんする。もし長期金利が5%になっていれば,その国の名目GDPは5%で成長することが予想されていることになり,株価は何もしなくても5%かそれ以上の上昇が見込めるという解釈が成立する。機関投資家などのプロの投資家は,株式投資を行うにあたって,株価と同じくらい金利の動向に注意を払っている。それは,長期金利の数字に将来の経済成長や株価の動向が色濃く反映されるからである。
・PERは今の利益が何年続くのかを示していることになり,PBRは,これまでの利益の蓄積に対して市場がどう評価しているのかを示していることになる。つまりPBRは純粋な会社の資産価値に対するプレミアムと考えればよい。

 以上である。私の株取引は,単純に現物取引で,下がったら買い,上がったら売るという単純なものである。手法としては,まず自分の気に入った銘柄を探す。銘柄は,自分の実生活に関わる銘柄が多い。そして,テクニカル分析で株価の動きを予想して,安いときに買い,高いときに売るという手法である。企業の財務やビジネス・モデル,市場環境などから,対象企業を定量的に分析するファンダメンタル分析は,ほとんど行っていない。それに近いことは,自分の実生活でこの企業は将来有望であると感じた銘柄を買っているということだろうか。渡しの場合は,応援したい企業に株式投資をしているという感覚が強く,その企業の株を購入することで,その企業を応援することを目的としている。また,配当金や優待なども受けられるメリットもある。しかし,現状のままでは,素人の株取引に毛が生えた程度だ。例えば,株式投資だけで生活するなどというのは,まったく不可能だ。そのために,企業分析の方法なども,より詳しく知る必要があった。だから,PERやPBRの説明は,とても役に立った。さらに,現状の日本の個人消費がまったく上昇していない点,日本のGDPの成長がこの25年間ほとんど見られない点など,諸外国と比べた日本の特殊性もよく理解できた。
 以上より,書いてある内容は,そこまで専門的ではないが,その分株式投資初心者には,とてもわかりやすい内容になっている。
posted by J-HASE at 22:43| Comment(0) | 金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月09日

中原圭介の経済はこう動く〔2017年版〕

 著者の分析による経済解説は,非常に説得力があり,納得させられる部分が多い。集められた情報から,極力主観を削ぎ落とし客観的な判断を心がけている著者の姿勢には,感心させられるばかりである。私が本書で参考になった点は,次の通りである。
・同じラテン民族であっても,スペイン人やイタリア人はフランス人よりもずっと勤勉ではないといわれています。基本的にスペイン人やイタリア人は,「その時だけが良ければいい」と考える傾向が強く,過去を振り返って反省をしたり,将来を良くしようと考えたりすることはないそうです。
・中国最大の経済規模で「世界の工場」として知られる広東省(深セン市を除く)が,最低賃金の引き上げを2年間凍結するという方針を2016年になってから決断したからです。企業がこれ以上の賃金上昇に耐えられなくなっているので,賃金の引き上げはさらなる企業の撤退や倒産を招き,社会不安を誘発しかねないと判断したようであるのです。
・日銀はインフレ目標が失敗したという事実を一刻も早く認めて,量的緩和とマイナス金利を改める段階に来ているといえるでしょう。とりわけマイナス金利の副作用によって,日本の経済システムを蝕み始めている事例がいくつも露わになってきているのです。黒田総裁は未だに「金融政策に限界はない」という発言を繰り返していますが,本当の胸の内は「今さら,後戻りはできない」「玉砕は覚悟のうえで,今の金融政策を続けていくしかない」と,意固地になっているとしか思えないのです。
・アベノミクス以前の2010年〜2012年の3年間で,生産年齢人口は132万人減少していたのに対して,アベノミクス以後の2013年〜2015年の3年間では,実に310万人と2倍超も減少していたというのですから,人手不足になるのは当然のことであったと言えるでしょう。生産年齢人口の急激な減少を背景に,2012年以降は失業率が徐々に低下し,有効求人倍率が上昇するのは,初めからわかっていたというわけです。
・2014年秋口から原油価格が暴落したことによって,2015年後半から原油安の効果が円安の悪影響を打ち消すことができたので,実質賃金が下げ止まりを見せ始めるようになり,2015年の実質賃金の下落幅を0.9ポイントに抑えることができました。さらに,2016年に入り,ドル円相場が円高基調に転換することによって,輸入物価も下げに転じるようになってきています。すなわち,国民の生活水準を決定づける実質賃金が押し上げられる環境が徐々に高まっているといえるのです。
・ドル円相場が行き過ぎた円安水準から修正されることにより,個人消費が2015年を底にして,2016年〜2017年には増加に向かうという予測が立てられるというわけです。
・銀行の収益悪化については,長期金利がマイナス圏に突入した影響がはっきりと銀行決算に表れてきていて,銀行はマイナス金利が拡大されることに強い警戒感を示しています。あるメガバンクの役員からは「2016年度以降の収益計画を立てることができない」といった嘆息が聞こえてくるほどなのです。
・日銀の黒田東彦総裁は何を考えているのか,マイナス金利政策の代表的な効果として貸家の増加を挙げているのです。人口減少社会が到来した日本では,すでに全国で820万戸の空き家があり,その半数以上は貸家となっています。ただでさえ今後も空き家が増えていくのは間違いないというのに,今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば,さらに空き家が増えて家賃が大幅に下ることになるでしょう。
・2015年終盤の段階で,2016年〜2017年の間にドル円相場は現時点の購買力平価である97円85銭に回帰するだろうと,あるいは95円〜100円程度の範囲内に戻ってくるだろうという予測が成り立つわけです。
。2016年8月末までの株式市場を振り返ってみると,非常にわかりやすい相場であったと思われます。米国が2015年12月に9年半ぶりに利上げをすることで,円安トレンドが円高トレンドへと転換し,株価が大幅に下落するというシナリオは,過去数年を振り返ってみても殊のほか読みやすいパターンであったからです。

 以上である。本書を読んで,2016年における円高トレンドは,米国の利上げの影響が大きいことがよくわかった。また,アベノミクスによる成果というのは,2015年は円安の悪影響が原油安で相殺され,2016年は,米国利上げによる円高の影響で実質賃金が上昇したということで説明できる。つまり,どちらもアベノミクスの政策自体の効果は,ほとんどなく,その実態は,海外の原油安,米国の利上げなどによって,悪影響が出なかったということに尽きてしまう。結果論だが,もしアベノミクスがインフレ政策として量的緩和を行わなければ,2015年の円安はそこまで進まず,原油安の影響で景気回復に向かった可能性もある。ところが,実際は,実質賃金の上昇も景気回復もない。失業率が減っているのは,団塊の世代が退職したからという影響が最も大きく,これ自体は,アベノミクスの効果ではない。しかし,世間の人たちはそこまで掘り下げて物事を考えないので,日経平均株価が上がり,失業率が減ったということは,アベノミクスは成功していると楽観的に考える。まさに,アベノミクス自体がそれを期待しているわけで,世間の人たちが「景気が良い」と勘違いしてくれることを切に願っているのである。つまり,アベノミクスとは,「株価の上昇」と「失業率の減少」というわかりやすい指標を,一般大衆に注目させることで,「景気が良い」と勘違いさせ,見せかけのインフレを目指しているのである。もちろん,個々にはいろいろやっているはずだが,大局的にはそういうことだ。アメリカの景気上昇と比較すると,日本はまるで静止しているようだ。株価はアメリカに追随しているだけ。日本オリジナルのお金の流れというものは,存在していない。つまり,今の日本は世界の需要を引き起こしていないし,むしろ,どんどん既存の供給を減らしている。そして,マイナス金利などみせかけの政策で市場は混乱している。お金をぐるぐる回しただけで,日本の景気が回復するはずがない。これから10年先20年先の需要を掘り起こすための日本オリジナルの政策がもっと必要なのではないだろうか。そして,政治とはそういう話をする場ではないのだろうか。
posted by J-HASE at 21:28| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

不透明な10年後を見据えて、それでも投資する人が手に入れるもの/岩崎 日出俊

 タイトルに惹かれて本書を購入した。本書は,これから10年がどのように変化していくのか,またそのためにどのような投資が必要なのかを,非常に具体的にわかりやすく説明している。私が参考になった点は,次の通りである。
・現在のグローバル社会は18世紀の社会と決定的に違うところがある。それは,ヒト,モノ,カネ,さらに情報の移動が自由ということだ。仮にグーグルやアマゾンがこれから更に強大化していくというのであれば,われわれはこれらの会社とビジネスをしたり,これらの会社に働き先を見出すことさえできる。もっと簡単な方法は,日本にいながらにしてこれらの会社の株を買うことだ。そうすることで,彼らが描こうとしている成長の波に乗ることが可能となる。
・十河一元の「失敗したって別に命を取られるわけじゃない」との言葉に押されたのかもしれない。私は45歳の時に興銀を辞めて外資系投資銀行に飛び出した。そして今から十数年前,「インフィニティ」という会社を起業し,経営コンサルティングとベンチャー企業への投資という2つの事業を営んできた。終身雇用のレールの上を歩んだ平坦な人生ではなく,その分,失敗もたくさんした。しかし失敗しても立ち上がればなんとかなる。これは私が自分自身の経験から言えることだ。もちろん独立・起業してからは苦労も大奥,土曜も日曜も関係なく働いている。
・公道での900キロメートルにも及ぶ公開走行のノウハウ蓄積を生かし,独アウディは2015年3月10日,「今から2年後の17年には自動運転車を師範する」と発表している。
・「機械を使いこなす人」,すなわちインターネット,コンピューター,ロボットを使いこなすことによって「勝ち組」に残る人たちは,より効率的に仕事ができるようになる。その結果,彼らは,より多くの自由な時間を持つようになる。そうすると創造とか芸術,スポーツの世界がいま以上に重要性を増してくる。
・たまたま長期間のデフレで顕在化しなかっただけだが,現預金にはインフレというリスクが存在する。今後,インフレというリスクが顕在化していくようなことがあれば,そこでは株式投資がリスクヘッジとして存在感を増すはずだ。
・アメリカの株式市場が上昇してきた背景には,アメリカ経済の成長がある。過去20年間で,アメリカのGDPは2.3倍にもなっている。一方,低迷してきた日本の株式市場の裏には,日本経済の停滞があった。過去20年間で,日本のGDPは微減(0.4%減)してきたのである。
・最もハズレがないのはアメリカへの投資だ。ダウ平均株価に連動するETFをおすすめしたい。ダウ平均株価は,P&GやGE,マイクロソフト,コカ・コーラ,アメックス,ボーイングなど,世界のマーケットでビジネスをしている米国オリジンのグローバル企業30社の株価の平均値を取ったものだ。世界市場で事業を展開している会社が多く,世界経済拡大のメリットを取り込めるのも魅力である。
・「特定口座」と呼ばれる口座で「源泉徴収あり」にすれば,株式で得た利益については,原則として確定申告が不要となる。「源泉徴収あり」の特定口座で扱えるのは,従来は日本株だけというところが多かったが,近年はネット証券各社で外国株にも対応するようになってきた。
・手数料についても心配することはない。一般的には「米国株取引は手数料が高い」と思われがちだ。そのため,「いくら米国株が有望だといっても,手数料が高いから,結局は儲けがパーになるのではないか」と考える人もいるかもしれない。しかしネット証券を使えば,6,000円から2,500円程度の手数料しかかからないし,為替手数料も25銭程度。収益が低い日本株を買うよりは,もっと簡単で割安なのが米国株なのである。
・実はアマゾンが初めて黒字になったのは創業してから9年後,上場してから6年後の2003年。それまでは一貫して赤字だったのだ。そして2003年に黒字化を達成した後でも,果敢な投資を行ってきた結果,2012年,14年と赤字に陥っている。もちろんアマゾンは創業以来,今日まで無配である。株主優待といった子供だましのようなものも皆無だ。にもかかわらず,アマゾンの株価は上昇を続け,上場時に比して18年間で実に300倍以上になっている。
・配当金を出すようにしたことで,株価が上がらなくなってしまった企業もある。代表的なのがマイクロソフトだ。1986年に上場して以来,マイクロソフトは17年間にわたって無配を続けてきた。しかし2003年1月,同社はとうとう創業以来,初めて配当を支払うことを宣言。けれども株価はほとんど反応しなかった。むしろ若干ながらも株価は下がってしまった。配当金を出すと宣言したことで,「もう成長が止まった」と一部投資家にみなされてしまったのである。
・PERとは,1株当たりの予想利益に対し,株価が何倍まで買われているかを示す数字で,これが大きすぎるときは,その株価が高すぎると疑った方がいい。
・住宅ローンについても注意が必要だ。アメリカでは,例えば住宅ローンを払えなくなったら,担保である住宅の鍵を銀行に渡せば終わりだ。日本だと,そうはいかない。日本で3,000万円の住宅ローンを組んだが,病気などの事情で払えなくなり,家の鍵を渡したとする。銀行がその家を競売にかけたところ,1,600万円で売れた。すると,残りの1,400万円について,持ち家を失った個人が引き続き責任を持って返済していかなければならない。米国に比べると,かなり厳しい制度と言える。
・日本の公的健康保険制度には「高額療養費制度」というものがあって,医療費として個人が負担しなければならない額の上限が決まっている。たとえ月に100万円の医療費がかかったとしても,自己負担は3割の30万円ではない。月8万7,430円以上の医療費は払わなくいいのである(実際には所得水準によって負担上限額は5区分に細分化されている。右記は年収約370〜約770万円の人の例。住民税非課税者は月3万5,400円が負担上限額となる)。
・最近の若い人たちは向上心が旺盛だが,時として即戦力には繋がらないものにエネルギーを注いでもいいかもしれない。ジョブズの言葉で言うと,己の心の赴くまま(follow your heart)ということになるのだが,将来,点と点が繋がると信じてみる。たとえ繋がらなかったとしても,それはそれで構わないではないか。だからといって,たいした痛手を受けることにはならない。
・五輪景気や五輪相場というのは,五輪が開催される前にピークを迎え,五輪開催時にはすっかり息切れしていることが多い。1964年10月に開かれた東京五輪でも,株価のピークは3年前で,五輪開催時には下落していた。しかも,五輪閉幕後から証券恐慌が発生し,同年には山一證券が赤字となり,翌1965年には,経営危機に陥った山一證券を救うべく日銀特融が発動される異常事態となった。今度の東京五輪は2020年。今から4年後だ。しかしその前に日本は10%への消費税増税(2017年4月)という大きな山を越えなくてはならない。
・グーグルが推し進めている自動運転車の行き着く先は,自動車の台数の劇的な減少である。「なぜ自動運転車を開発したいのか」との問いに対して,ラリー・ペイジ(共同創業者兼CEO)は交通事故を減らしたいと答えたが,同時に「空間を上手に利用し暮らしを豊かにしたい。ロサンゼルスの半分が駐車場や道路というのは問題だ」と述べているのだ。
・戦後70年を経て,日本人は,いつの間にか守ることを大事に考えるようになってしまった。いまや大学生の就職希望先で第1位は地方公務員だという(第7位が国家公務員)。社会全体にチャレンジ精神がなくなってしまった日本に,はたして成長のドライバーとなるイノベーションが起きるのか。本当の日本リスクとはリスクを取らないこと,すなわち起業家精神の喪失にあるのではないか。

 以上である。本書の最大の特長は,具体例が非常に多いという点にある。著者は,数々の具体例を列挙することで,著者本人が伝えたいメッセージを明確に伝えている。そして,挙げる具体例は,非常に説得力があり,著者の意見をさらに強める結果となっている。著者は,チャレンジ精神旺盛で,視野も広く,自ら多くの情報を集め,分析し,それをもとに自分で判断を下している。それに対して,多くの一般大衆は,自ら思考せず,大きな流れに乗っかって人生を過ごしている。さらには,それを「幸せなこと」と自己暗示までかけている始末。せっかく生きているのに,何も情報を集めず,判断もせず,適当に生きている。著者はそういう人たちに警鐘を鳴らしているのである。私自身,サラリーマンで,毎日を忙しく過ごしている。とても悠長に情報を集めたり,分析したりする暇はない。しかし,それは言い訳ではないか。未来の自分に投資することは,「時間がない」などというしょうもない理由で割愛されるべきものではない。むしろ,何としてでも実行しなければいけない必須の課題である。これからは,それを肝に銘じたい。
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大前研一 日本の論点2016〜17

 この本を購入して,すでに1年近くが経過してしまった。ようやく,書評を書く余裕が持てた。本書は,2016年から2017年にかけての展望を著者が述べたものである。私は,著者を尊敬していることもあり,大変参考になった。私が参考になった点は,次の通りである。
・米ドルとユーロをベースにして,カナダドルや豪ドル,ノルウェーのクローネなど,自分で将来性があると見立てた途上国を含めて五種類ぐらいに配分して外貨預金をするのがベストだ。ゼロから始めるなら,給料の半分を外貨預金に充てるくらいの気持ちでなければ間に合わない。
・私が提案しているのはラストワンマイルの配送を一社に集約するデリバリー組合の設立だ。新聞から郵便物から宅急便まで,入れ代わり立ち代わりに家庭にものを届ける業者がやってくるが,目的地に届ける”最後のワンマイル”のデリバリーを一社に集約できれば,物流の効率は飛躍的に向上する。地区ごとに宅配会社のうちの一社を決めて,各社はそこに配送する。そこから先は,その地区を任された会社が「右代表」で各家庭に届ける。顧客にとっても,何回もベルを鳴らされないで済むし,郵便受けまで何回も足を運ぶ必要がなくなる。そうした仕事の創意工夫が足りないために,日本全体で人材の適正配分ができていない部分が数多く残されている。これが解消されていけば,当分,日本は人手不足にならない。
・私は水素エネルギーを分散型の燃料として利用するのは反対だ。やるのであれば集中型にして,水素発電で電気を作って,電気の形でハイブリッドカーや電気自動車(EV)に供給していく。水素そのものを分散して,車のような移動体に搭載するのは危険が多すぎるのだ。水素を社会インフラにするのに反対しているわけではない。時期尚早,と言っているのだ。
・イラクで暮らしている先住民族のクルド人の数は,約500万。彼らはイラク戦争後に北部で自治権を与えられて,同地域の石油権益も自分たちで押さえるようになった。さらに今回のISIL侵攻による国内の混乱で独立の機運が高まり,クルド人国家独立の是非を問う住民投票の実施に向けて動き出したのだ。
・クルド人は国家を持たない世界最大の民族であり,トルコには約1,400万人のクルド人がいる。クルド人自治区の独立問題が中東の大国トルコに波及すれば,中東情勢は大混乱に陥る。まさしく「国家とは何か」という問題を呼び起こしかねない。ヨーロッパでもスコットランドに続いてスペインのカタルーニャで独立の是非を問う住民投票が計画されるなど,中央政府からの分離独立を目指す動きが活発化し,方々で国家のあり方が問われている。
・金利をゼロにした後に打てる手は市中に金をばらまくしかない。アベクロ・バズーカなどが典型的なもので,経済が上向かないのは230兆円の余資を持つ法人も1,600兆円の金融資産を持つ個人も金を使おうとしないからだ。つまり金はもともと市場にあふれかえっており,それを使おうという気持ちにならない心理,すなわち「低・欲望社会」の問題を解決しない限りいくらマクロ指標をいじってみても景気は上向かない。

 以上である。個人的には,クルド人自治区の詳細については,本書で初めて知ることができた。水素社会についての問題点も,まさにその通りと感じる。外貨預金については,将来的な視野に入れているが,現状の円安状況を考えるとなかなか難しいのが現状だ。本書は,発売から1年以上が過ぎているが,世界の現状を知り,将来を考える上では,非常に参考になる本である。
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2016年05月19日

経済を読み解くための宗教史/宇山 卓栄

 著者は,慶應義塾大学経済学部卒業で,代々木ゼミナールで世界史を教えている。私自身は,理系の人間で,世界史や宗教史については,まったく無知と言ってよいほど知識がないが,本書を読むことで,経済と宗教という一見なんの関連もないように思われた分野が,どのように関わっていたのかをとても詳しく理解することができた。現代の私達が,歴史や経済,その他諸々の分野の事柄と同時進行で時が流れているように,当時の人々にとっても,様々な事柄が関連して時が流れていたはずである。だからこそ,当時の人達が何を考え,行動していたのかということは,それらすべてを包含して考える必要がある。著者は,それをよく認識していると思われる。私が参考になった点は,次のとおりである。
・醜い争いが醜いままでは,それぞれの陣営は求心力を確保することができません。そのため,争いを美化する必要があり,そこに宗教が使われ,神の名における「聖戦」というものがでっち上げられ,広報されていきます。
・神という絶対理念が,人々の信用の源泉となり,古代の高度な決済システムを可能にした,と言えます。
・人間は周囲の人々が皆一様に貧困である時,それ程に苦痛を感じませんが,周囲の一部の人間が富を享受しはじめると,富裕な人間と自分の貧しい境遇を比べ,自らの哀れさを痛感するものです。
・弱者が強者に対して,憤り・怨念・憎悪の感情を持つことを「ルサンチマンressentiment」と言いますが,哲学者ニーチェは,キリスト教が「ルサンチマン」によって発祥した宗教であることを『道徳の系譜』の中で明らかにしています。
・コンスタンティヌスは,312年,天下分け目の最終決戦に向かう軍行中,太陽の前に,ギリシア文字XとP(キリストのギリシア語綴りの最初の2文字)が浮かび,「この印と共にあれば汝は勝つ」という啓示を得たと伝えられます。
・儒教の中庸の精神はグローバル化における多様性や多義性を包摂する,最もグローバル化に適した新しい持続価値(サステナビリティ)と言っても過言ではありません。
・現在のインド12億人のカースト別構成比は,第1身分のバラモン(僧侶,司祭階層)が約5%,第2身分のクシャトリア(貴族階層)が約7%,第3身分のヴァイシャ(商人階層)が約3%,第4身分のシュードラ(奴隷階層)が約60%とされます。
・ヒンドゥー,インドという言葉は同じシンドゥ(sinshu)「水,大河」という意味で,インダス川の恵みによって発生した地域や社会全体を指す総称です。従って,ヒンドゥー教とはインド教のことなのです。
・いわゆる言葉通り,純然たる信仰を巡る戦いの「聖戦」なるものなど,実際にこの世にはありません。仇討ちや経済的な利害以上に,人間同士が殺し合う動機など,本来,あり得ないからです。イスラム教とキリスト教十字軍の争いは,信仰を問題にした宗教戦争のように見えますが,突き詰めていけば,領土紛争,利権闘争の類いであり,宗教的な対立が直接,戦争の原因になったわけではありません。
・中世の時代,人間の叡智よりも神の叡智が優先され,神学上の解釈は法をはじめ,政治制度,商慣習など,あらゆる分野に大きな影響を与えました。
・【クルド人】人口は約3千万人で,独自の言語と文化を持つ民族です。イラク北部からトルコ南東部を中心に居住。2003年のイラク戦争で,イラク北部にクルド人自治区が作られ,実質的に独立します。クルド人自治区の首都エルビルは近年,オイルマネーと欧米の資本が流れ,「第2のドバイ」と呼ばれる程の経済発展を遂げています。
・過去を悔い改め,真理を目指す人間の主体的行動や努力をエラスムスは「自由意志」としました。エラスムスは中世の神学,カトリック体制が人間を神に隷属させ,「自由意志」を持たない堕落した存在に貶めたとし,神と向き合う人間の「自由意志」を回復する「人間復興」を唱えたのです。
・カトリックは神の教えを教会によって授けます。プロテスタントは神の教えを聖書によって授けます。「教会が重要か,聖書が重要か」この違いがカトリックとプロテスタントの決定的な違いです。
・マルクスによると,政治,文化,宗教というものは社会の深層に横たわる物質的経済要因の表層として現れるもので,それらの表層は如何なる場合でも,物質的下層と遊離して単独で存在することはできません。ウェーバーの,宗教が経済のあり方を規定した,という主張と,全く反対のことをマルクスは言っています。
・聖職者が財産を奪われたことに怒り,執拗に民衆を扇動し,大規模な反乱を生じさせ,国家そのものを崩壊の危機に陥れたという事実は,宗教が如何に世俗の富に執着しているかということの証左でもあります。
・経済は純粋に経済行為のみによって成立し得るものではなく,何らかの倫理規範や宗教規範が必然的に入り込んでくるものであることが,特に経済の危機に際して,如実に現れます。経済的な善悪の価値基準だけで,社会の現象の全てを説明することができない限り,人間は倫理や宗教における善悪の価値基準によって補おうとするのです。
・【ヒヤル(潜脱)】「ヒヤル」は奸計という意味を持ちます。実質的な利子をモノの取引や配当に見せ掛けて,イスラム法に抵触させない術は「ヒヤル」とされます。この他,一時的な結婚をし,夫婦関係を作った上で売春をすることで,姦通の罪を免れ,売春を合法化させることができます。これも「ヒヤル」です。イスラムでは様々なこじつけによる「ヒヤル」が横行しています。
・元々,ダイヤモンド原石はルビーやサファイヤと比べ,生産量が多く,希少価値が高いものではありませんが,ユダヤ人が独占的にダイヤモンドを取得し,市場への流通を制限することで,希少なもののように,巧みにイメージ操作しました。
・ローマ時代から蓄積された情報やネットワーク,金融技術が近代以降の巨大ユダヤ資本であるロスチャイルド(イギリス)やJ・P・モルガン(アメリカ)を生みだします。イギリスやアメリカで成功したユダヤ財閥は両国の政治に大きな影響力を持つに到ります。
・いかに迫害を受け,財産を奪われたとしても,知識は奪われることはありません。ユダヤ人の勤勉さは,学術の世界で多くの人材を輩出しています。ユダヤ人は世界の人口の中で,0.25%しかいませんが,ノーベル賞受賞者の約20%を占めます。その中には,アインシュタイン(物理学賞),ボーア(物理学賞),ベルグソン(文学賞),キッシンジャー(平和賞),サミュエルソン(経済学賞),フリードマン(経済学賞)らがいます。
・第1次世界大戦後から1929年の世界恐慌にかけて,ドイツ企業の多くがユダヤ系金融の支援を受け,ユダヤ資本の傘下にありました。ドイツ企業はナチスのような民族主義政党と癒着し,反ユダヤ人キャンペーンを巻き起こし,ユダヤ人を駆逐することで,巨額のユダヤ資本への債務を消し去ろうとしました。
・第1次世界大戦後,アメリカの影響力が強まり,逆にイギリスの影響力が弱まる中で,ユダヤ人はアメリカに積極的に働き掛けるようになります。第2次世界大戦がはじまり,ナチスのユダヤ人迫害が本格化すると,ユダヤ人はアメリカへの支援要請を行います。ユダヤ人はアメリカでのロビー活動を通して,当時のアメリカのルーズヴェルト政権に巨額の資金提供を行うのと引き換えに,戦後,パレスティナでの正式なユダヤ人国家建国の支援を約束させます。
・【アメリカの証券大手】ゴールドマン・サックス,モルガン・スタンレー,ベア・スターンズなど,アメリカの証券会社はユダヤ系か,ユダヤ色が強い会社です。2008年,リーマン・ショックを引き起こしたリーマン・ブラザーズもユダヤ系です。また,リーマン・ショック後,バンク・オブ・アメリカに買収されたメリルリンチもユダヤ系です。
・この「ブルジュ・ハリファ」を更に超えるハイパー・ビルディング「ドバイ・シティ・タワー」が建設されています。なんと,高さは2400m,地上400階で,2025年に完成予定です。タワーの土台部分の一部が海に突き出て,クルーズ船の停泊地になる設計です。
・石油資源が豊富であるイスラム世界が,石油資源のない日本のような国と比べて貧しいのは,不思議なことです。それは,収奪的な独裁政権が石油の利益を独占しているからに他なりません。
・如何に,人間が理性を振りかざしてみても,人間や社会を自ずと,公正さと正義に導くような神の「見えざる手」の存在を誰も否定することはできません。神なる超越者とその偉大な力を感じ,畏怖することは,宗教的な信仰があろうとなかろうと,人間である限り,避けて通ることはできません。その意味において,人間は本質的かつ宿命的に,宗教的な存在なのです。
・自尊心に満たされた人間は,公正さと正義を標榜する「胸中の公平な観察者」に適合し,他人を信じ,他人に与え,また,与えられ,必要なものを交換し,助け合う互恵的な関係を築くことのできる社会的な存在になります。
・経済の成長には,人間が人間と連帯し,協調し,信頼するということが欠かせません。そして,それを可能にするものが公正さと正義の理念であり,近代思想家たちが理性と読んだものであり,スミスが「胸中の公平な観察者」と表現したものです。

 以上である。本書を読むことで,歴史をより人間らしい視点で理解することができた。私が,学校の歴史の授業が好きになれなかったのは,その内容があまりにも表層的すぎて,人間の歴史なのに,人間の本質を何も述べていなかったからだ。ただその時代その時代に起こった出来事が淡々と述べられているだけで,それを本当の意味で理解することなど,一人では到底無理だった。しかし,本書を読むことで,当時の人達の考えていたことが,僅かではあるが理解でき,戦争が起こった理由や,迫害された理由に納得できた。確かに人間の歴史とは,経済の歴史,お金の歴史であり,それを抜きにして,理性だけでその本質を語ること自体に無理があるのだ。それは,今の時代の私達が,お金というものの価値を最も重要視していることと一致している。結局,人間の歴史とは「お金の歴史」であり,戦争とはその「お金」の奪い合いだったのだ。しかし,そのような中で,人間は少しずつ利口になり,そのお金の扱い方が上手になってきた。グローバルな視点での貧富の差を,経済政策でなんとか解決しようとしている。そのようなことで戦争になることはないだろう。しかし,近年でも,リーマン・ショックなど,その副作用は続いている。まだまだ経済は安定しているとは言いがたい状況だ。人間の歴史が,お金を扱う歴史であるとするのならば,戦争を起こさないために,そして,皆が裕福な生活ができるように,私たちは,今後も知恵を絞っていかなければならない。本書を読んで,そのように感じた。
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2016年05月07日

未来に先回りする思考法/佐藤 航陽

 タイトルに興味を持ち,本書を購入した。著者は,株式会社メタップス代表取締役社長。大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し,代表取締役に就任した新進気鋭の人物である。そのような著者の語る言説には,経験に基づいた説得力があり,非常に読み応えがあった。私が参考になった点は,次の通りである。
・人間は課題を解決するテクノロジーを発明します。そして,時を経るにつれそのテクノロジーは社会構造に深く組み込まれていき,いつしかそのテクノロジーの存在自体が人間の精神や行動を縛るようになります。まるで,人間とテクノロジーの主従関係が逆転したかのように。
・電力は,電球からはじまり,最終的には発電所の送電により家の中のあらゆる物体とつながり,動力を持つに至りました。うちわは扇風機になり,ほうきは掃除機になりました。インターネットもまったく同じプロセスを経て,あと数年で,電気と同様に社会の隅々にまで完全に浸透し,空気のような存在となるでしょう。
・インターネットが様々なデバイスとつながっていくこと,それはこれまでデータとして計測できていなかったあらゆるデータの収集が可能になることを意味します。そしてその延長にあるのが,「意思決定の省略」です。休日のデートプラン,最も相性がよい転職先,結婚相手の選択,はてはどこに資本を投下するべきかという経営判断まで,すべてのシーンにおいて,よい結果をもたらす確率の高い行動を,システムが教えてくれるようになります。これから,人間は持って生まれた脳以外に,外部にあるいくつもの「知性」を使いこなし,それに寄り添って生きていくことになるでしょう。
・すでにディズニーでは,ユーザーの「感動のパターン」がノウハウとして蓄積されており,そのフレームワークに沿って映画が作られているという話を,エンターテインメント業界に勤める方からも聞いたことがあります。実際,少年誌の人気マンガの登場キャラクターやストーリー展開が驚くほど似ていると感じた方は少なくないでしょう。
・Googleは,人工衛星をつくっている宇宙ベンチャーのSkyBox 社を5億ドル(約600億円)で買収して,衛生を通してインターネットを安価に提供する構想を進めています。これは一部ではインターネットに対し「アウターネット」と呼ばれています。新興国を中心に世界中に偏在する,ネットにつながっていない50億人を一気にネットにつなげてしまおうというのがその目的です。たしかに,いつ終わるかわからない各国の通信キャリアによるネット回線の整備を待つよりも,宇宙空間から自分たちでネットを提供してしまうというのは合理的な判断です。Google としてはネットを使う人が増えるほど自社のビジネスの対象が広がり,結局は利益という形で返ってきます。
・Google が Android 社を買収して本格的にスマホに本腰を入れ始めたのは2005年8月ですが,Windows Mobile が発売されたのは,まったく同じ月でした。iPhone の発売は少し遅れて2007年1月ですが,2004年の段階ですでにジョブズは「iPod の携帯電話版を考案中だ」と話しています。実際にスマホが世界的に携帯のスタンダードになるのが自明となったのは2012年頃ですが,彼らは8年以上前からその時代の到来を理解し,買収や開発を進めていたほうに感じます。彼らは変化にスピーディに対応し,後追いでプロダクトを完成させたのではありません。同じ未来像を見ながら,いつそれに取り掛かるのが良いか,タイミングの読み合いをしていたのです。
・なぜ世界人口の1%にすぎないユダヤ人が,ノーベル賞受賞者の20%を占めるのか。それは,決して先天的な素質によるものではありません。彼らの賢さは,数千年の長い迫害から生き延びるために必然的に身につけざるをえなかった「知恵」なのです。
・差し迫った危機が存在しない状況は,国としてはとても幸せなことです。戦争をしているわけでもない。経済は安定していて,現状を維持しても生活ができる。治安は抜群によく,テロなども滅多に起こらない。イノベーションが無くても国が成り立っているというのは,世界一安全で安定しているからこその「贅沢な悩み」なんだということは,他国を見てはじめてわかりました。
・いまや企業の経済活動が一国で収まることは稀です。そして,国家のように領土に規定されない分,企業は世界中でビジネスを展開し大きな力を持つようになっています。ちなみにApple の2014年の売上は1828ドル(約22兆円)です。企業の「売上」を国家の「歳入」と同等に考えれば,Apple はすでに約200ある国家のうち20位付近に位置し,多くの国家を超える力を持っています。
・電子マネーの流通が増えてくれば,ますます実体経済での取引量と名目上の通貨の流通量が一致しなくなってくるでしょう。経済規模が縮小しているように見えて,実はバーチャル経済に中心が移動していただけだったという世界も,その実現が近づきつつあります。
・あるシステムは,社会に浸透してしばらく時間が経つと「どんな必要性を満たすために生まれたのか」という目的の部分がかすんでしまい,そのシステム自体を維持することに目的がすり変わってしまうというのも,繰り返し見られるパターンです。だからこそ私たちは,定期的に原点に立ち返ることが必要になります。
・すべての価格が無料に近づき,企業が自社の拡大のためにインフラを提供する傾向が進行していくと,産業革命以後に確立された,「労働をし,資本を手に入れ,生活する」という図式が崩れてくることが予想されます。ベーシック・インカムによって最低限の生活が保障されるようになると,生活をするための労働はもはや必要ありません。
・インターネットによりリアルタイムで情報がやりとりされる現代の社会では,その理不尽は可視化されています。自分が幸せであるかどうかは相対的な概念でしかありませんから,他人と比較が容易な今の社会は,相対的に不幸を感じやすいともいえるでしょう。
・もし現実世界に希望を感じられずに,コンピュータがつくりだす仮想世界のほうをメインに時間をすごす人が増えたならば,現実世界のほうがオプションになってしまう可能性も十分にありえます。テクノロジーがさらに進歩し,五感のほとんどを再現できるようになったとき,人は自分が最も暮らしやすい世界を「現実」として選択し,生きていくようになるのでしょう。
・テクノロジーの進化があるシステムを時代遅れにしてしまうことがあるように,時代の急速な変化によって,かつて自分が選んだ道が最適解ではなくなっているということはたびたび起こります。
・物事がうまくいかない場合,パターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんどです。サンプルが必要だと頭ではわかりながらも,感情的な理由から十分な数が集まる前にあきらめてしまう。目標の達成を阻んでいるのは,実は人間の感情というフィルタだったりします。
・人のつくりだす論理は,情報の不足と理解力の限界によって,完璧なものにはなりえません。しかし,社会は「論理的であること」を判断の前に求めるので,しかたなく後から,それらしい理論をくっつけて「理解できている」ことにしておかないと機能しないのです。
・現在の認識でできそうに見えることは,将来の自分にとっては楽勝でできる可能性が高いのです。今できそうに思えることをし続けることは,大きな機会損失ともいえます。もっと高い目標を設定していれば,もっと遠くまで行けたのですから。
・イノベーターとは,まったくゼロから新しいものを創造する人たちではなく,少し先の未来を見通して先回りができる人たちなのだといえるのかもしれません。誰がいつ実現するかは最後までわかりません。しかし,何が起きるかについては,おおよその流れはすでに決まっています。人が未来をつくるのではなく,未来のほうが誰かに変えられるのを待っているのです。適切なタイミングでリソースを揃えた人間が,その成果を手にします。

 以上である。著者の現実社会の分析力には,本当に感心する。これまでの歴史分析を踏まえて,これから未来がどのように変化していくのかを的確に予測している。現時点では,夢物語のような未来も,確実に実現すると予測している。なぜならば,これまでの歴史を考えると,人間が想像できる程度の未来は,確実に実現されているからである。問題は,将来実現されないと考えているものの中から,実際には実現されるということを,いかに早く察知するかということである。それができるかどうかが,経営者として成功するか否かを分ける分水嶺であると言っても過言ではない。一般の人が予測できるような未来から,利益を得ることは不可能だ。そのような場所には,多くの人が集まり,低価格競争の渦に巻き込まれることになる。経営者として,利益を得るためには,その先の誰もがまだ気がついていない未来を予見する力が必要だ。それこそが,経営判断能力そのものだ。本書を読んで,経営者としての素質とは何かを学ぶことができた。
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2016年05月04日

男が老化しない生き方/石原 結實

 著者は,長崎大学医学部卒業,同大学大学院医学研究科博士課程終了の医学博士。そして,医者としての経験に基づいた説得力のある文章が特徴だ。日頃から,健康については関心があり,本書を読んでとても勉強になった。私が参考になった点は,次の通りである。
・ともかくも,尻や下肢の筋肉が削げ落ちて下半身が寂しくなると,種々の病気の他にも,老眼,白内障,難聴,歯そう膿漏,シミ・ソバカス,白髪やハゲ・・・等々の老化現象も現れてくる。「廊下は足(脚)から」と言われる所以である。
・肉体労働者やスポーツマンは,一般の人より,心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を送り込んでいる冠動脈の内径が大きく,また,心筋の毛細血管の数も多い。その上,冠動脈にバイパスができていることも多く,冠動脈血栓症=心筋梗塞が起きても,バイパスにより血液も心筋に送り届けられるので,大事に至らない。
・筋肉を動かす(鍛える)ことにより筋肉が発達すると,筋肉内を走っている毛細血管の数もどんどん増加する。よって,心臓から全身に血液を押し出す力(血圧)は,末梢の毛細血管の数が増えることにより抵抗もその分減ることで,弱くてすむ。つまり血圧が下がる。
・ガン細胞は35℃の体温で最も増速し,39.6℃になると死滅する,とされている。
・筋肉運動をすると,筋肉細胞の中で男性ホルモンのテストステロン(女性の体にも存在)の合成,分泌が促され,「自信が高まる」ことがわかっている。テストステロンは,男の体(筋肉),男らしさ,精神(心)を作る上で,極めて大切なホルモンである。
・「骨は加えられた力に反応して強くなる」(Wolffの法則)ことがわかっており,筋肉運動,しかも負荷をかけるダンベルなどを使ったレジスタンス運動をすると,骨も強くなる。つまり,「弱い筋肉には弱い骨」が「強い筋肉には強い骨」がくっついているのである。
・筋肉は鍛えれば90歳になっても発達することがわかっている。
・「腕立て伏せ」をすることで,上半身に存在する筋肉のほとんどを刺激,鍛えることができる。
・成長ホルモンは,運動後と休息中,とくに睡眠中に多量に分泌される。入眠後,約30分で,ノンレム睡眠(深い睡眠)に入るが,この時,成長ホルモンの分泌量は,最大になる。
・日本の本草書(薬学書)として有名な『本朝食鑑』(1697年)に,「ゴボウは男性の強精剤である」と書いてある。相似の理論から容易に納得できるが,科学的にいうと,ゴボウに含まれるアルギニン(アミノ酸)が,精子の成分になることからして,当然の理である。アルギニンは,女性ホルモンのバランスを整え,生理不順や更年期障害にも奏効するという。
・禅寺で,寺門の脇に掲げられている戒めの後「葷酒山門に入るを許さず」の「葷」とは臭いの強い野菜のことで,ニラ,ニンニク,ネギ,ラッキョウ,ヒルは「五葷」とよばれる。「あまりに強精作用が強いので,修行中の僧侶は食べてはいけない」ということである。こうした「五葷」には,「性欲回復ミネラル」とも言われる「セレン」が含まれている点も,強精効果を発揮する所以である。
・昔からタラコが「勃ち」「硬さ」「性力増進」「スタミナ」すべてに,即効性があることはよく知られている。
・カキは,エネルギー源のグリコーゲン,B1・B2・B6・B12などのビタミンB群,銅・鉄・マンガン・ヨード・カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれるので,「海のミルク」とよばれるよど滋養がある。またセックス・ミネラルの「亜鉛」の含有量は,全食品中断トツの1位だ。カキ鍋を食べた翌日の「朝立ち」が猛々しいのを経験されたことのある殿方も少なくないはずだ。
・日本人の死因の2位=心筋梗塞(約20万人)と4位=脳梗塞(約12万人)が血栓症なので,「血液をサラサラにする」との大義で,水分の大量摂取がすすめられている。しかし,雨にぬれると体は冷えるように,やみくもに不必要な水分をとると,体は冷える。
・もともと類人猿・原始時代は,女性は1つのファミリー(群れ)の中にいて,そのファミリーのボスに守られて生活していた。よって,女性の遺伝子,深層心理の中には,「強い男に守られたい」「強い男性に征服されたい」という意識がある。
・肝臓は,血液や体内に発生した有害物の解毒気管であるため,過食や肉食過剰により,腸内に猛毒物質が生じると,その解毒に追いやられ,肝臓が傷めつけられ,ウイルスやアルコールや薬剤によって肝炎を発症しやすくなる。同様に,便秘をすると腸内に有毒物が発生し,肝臓を傷める要因になる。
・脂肪が多くなると脂肪細胞からは,女性ホルモン様物質が産生・分泌されるので,テストステロン(男性ホルモン)の作用を減弱させ,性力も低下するし,肉体的にも精神的にも男らしくなくなってくる。

 以上である。著者は2014年当時65歳で,45年間一度も病気をしたことがなく,薬も1錠も服用していない。そして,筋肉を鍛えることで,ほとんどの病気が防げるし,老化とも無縁でいられると述べている。それは,確かにその通りだと実感している。体が弱い人ほど,サプリを常用したり,病院で薬漬けになっている。それは,根本的に間違っていて,要は体を鍛えればよいのである。極論すれば,健康になる方法はそれしかないと言っても過言ではない。私自身,2月からランニングを始め,雨の日以外は毎日7 km走っているが,みるみる体が健康になっていくことが実感できた。私の場合は,糖代謝が改善し,昨年度の健康診断では要検査と言われていたのが,今年度は改善していた。おそらく,昨年病院に行って,薬を処方してもらったところで,私の体はたいして健康にはなっていなかっただろう。要は,走っていればよかったのだ。わざわざジムなどに通う必要もないし,歩数計を付けて,毎日の歩数を記録する必要もない。ただ,毎日走るだけで,体はみるみる健康になる。人間の体は,そのように出来ているのだ。楽をして健康になることはできない。本当に健康になりたいのならば,「体を動かして,筋肉を鍛える」。これに尽きる。
posted by J-HASE at 12:38| Comment(0) | 健康 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする