2017年07月17日

歯は磨かないでください 歯周病を治すと、全身が健康になる/豊山 とえ子 (著), 近藤隆一 (監修)

 40代になり,かなり歯のケアについて気にかけるようになった。最近でも,立て続けに歯がもげて,自分の歯をかなり心配している。やはり,甘いものを食べすぎているのかもしれない。そのようなこともあり,本書を購入した。私が参考になった点は,次の通りである。
・疲れているときには代謝が落ちているので,出るべきものが出ません。つまり唾液の量が減るのです。唾液が減ると,本来常に唾液に洗い流されて清潔に保たれているべき口の中が乾燥し,細菌が繁殖します。
・ご自宅で塚区歯磨き粉をホワイトニング剤含有のものに変えるのも手軽にできる方法です。「クレスト 3Dホワイト グラマラスホワイト」などがあります。
・水がしみるという知覚過敏の症状は,歯が欠けて起こる場合もありますが,年齢や歯周病の悪化で歯肉が退縮してきて,歯の根の部分が露出してくることによって起こる場合もあります。
・虫歯菌は砂糖が大好きです。また,砂糖を食べると体の免疫力が下がります。砂糖を分解するのにカルシウムが必要になります。もともと体には天然のカルシウムがありませんので,仕方なく,体の骨や細胞のカルシウムを消費せざるを得なくなります。すると骨粗鬆症につながります。
・いろいろ種類はありますが,なんといっても,日本の歯科医が選ぶナンバーワンブランドである「ソニッケアー」(フィリップス)と,「オーラルB」(ブラウン)が圧倒的な効果を誇っています。
・私がおすすめしているのは,「アパガードリナメル」という歯磨剤です。50g1000円前後ですが,ナノ粒子のハイドロキシアパタイト(HA)が配合されています。歯を研磨するのではなく,微細な凸凹をナノ粒子のHAが埋め,輝く美しい歯をつくります。汚れを「つきにくくする」ので,予防に力を入れている歯科で特におすすめしている歯磨剤のひとつです。
・日本の健康保険制度の中で許可されてりう金属は最低保証だということを知っておいてほしいです。一般的に保険制度の中で認められている銀色の金属は,金銀パラジウムの合金です。これは,歯の硬さよりもかなり硬い金属なので,噛み合わせたときの影響を考えてしまいます。一部を削って,これを詰めた場合に,噛むたびに歯の生きている部分と金属の間に多少のたわみができるのです。ですから,接着面から新たな虫歯ができることも多いのです。汚れがつきやすい金属なので,治療から2〜3年目で悪くなることも多いです。

 以上である。とにかく,歯に関しては,自分の体の一部なので,そのケアはこれからも引き続きしっかりと行いたい。幸い,経済的には問題ない生活ができているので,この本で勧められていた「アパガードリナメル」という歯磨剤の購入を検討したい。また,個人的には歯の定期検診には,少し疑問を持っている。定期検診では,小さな虫歯も治療され,歯を削られる。だから,定期検診をするたびに,歯が削られるのだ。そうなると,いずれは神経を取られたり,最悪,抜歯というということになる。私の場合は,親知らずの歯は,4つとも健在なのだが,歯科医では虫歯の治療をする度に,親知らずの抜歯を勧められる。普段の生活にまったく問題なのに,なぜ親知らずを抜歯しなければならないのか,全然意味がわからない。むしろ,1本でも多くの歯を残すことこそが,歯科医の使命ではないのか。そう思わずにはいられない。そういう意味では,すぐに歯を削ったり,神経を取ったりする歯医者には,怒りさえ覚える。本書のような本を多くの人が読んで,日本人の葉の健康に対する意識が高まることを強く望む。
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戦略は歴史から学べ―――3000年が教える勝者の絶対ルール/鈴木 博毅

 過去の歴史から,現代のビジネス戦略を考察するという本。もともと世界史に興味があり,それをビジネスとどのように関連させるのかということにも興味を持った。私が参考になった点は,次の通りである。
・世界長者番付で13年連続の1位だったビル・ゲイツ氏は,高校時代から当時普及し始めたコンピューターにのめり込み,ハーバード在学中に友人のアレンと大手企業にプログラムを売り込むも,最初は上手くいきませんでした。しかし1974年に新発売のコンピューター「アルテア」が雑誌に掲載されるのを見て,二人は衝撃を受けます。
・アメリカのタイメックスは腕時計業界に進出するとき,高級で知られるスイス製腕時計が並ぶ宝飾品店に出品せず,スーパーマーケットなどの店頭で販売し低価格腕時計の新たな市場を生み出しています。
・「考えるばかりで始めない」姿勢は,試験運用をすぐ開始して試行錯誤から始める側からすれば,好機をつかめない”のろまな亀”となってしまうのです。
・1920年代の日本は,第一次世界大戦の戦時バブルが崩壊。日露戦争の膨大な戦債の支払いで困窮していた市民生活は,一時持ち直すも慢性的な不況に苦しみます。1931年に日本の関東軍が満州事変を起こして,日本は満州国を建設。日本のシベリア出兵などで警戒感を強めていたアメリカなどの列強の避難を浴び,1933年には国際連盟を脱退。長引く不況,軍部の台頭,国際社会での孤立の三つの難題を抱えます。
・1941年7月,日本軍はフランス領インドシナ南部に進駐を開始。アメリカはフィリピンを植民地としており,この進出は許容できず日本への石油の全面輸出禁止を発動。この措置に驚いたのが日本海軍です。石油備蓄はわずか一年しかなく,備蓄が尽きたときにアメリカから戦争を仕掛けられることを怖れて早期開戦論が浮上します。日本政府は開戦を避けるためアメリカと交渉を続けましたが,日本軍がインドシナ南部の撤兵を一貫して拒否したため,11月26日には日本側が受け入れにくい条件のハル・ノートが提示され,数日後には外交交渉も打ち切られます。1941年12月8日,日本軍は真珠湾を攻撃。この報告でイギリスのチャーチルは戦争の勝利を確信します。日本がアメリカに宣戦布告したため,同盟国の独伊もほぼ自動的にアメリカに宣戦布告。この結果,アメリカは欧州戦線に連合国側で参戦を開始します。
・1945年4月30日,ヒトラーはベルリンの司令部地下壕で自殺。二日前にイタリアのムッソリーニが逃亡中に射殺され,8月6日には広島に,8月9日には長崎に原子爆弾が投下されて第二次世界大戦は終了します。
・1945年6月に日本軍の沖縄での組織的な抵抗が消滅。8月上旬には広島,長崎で原爆が炸裂。ソ連が日本に宣戦布告し,150万人が満州,4万人が北朝鮮に攻め込みます。
・38度線の南をアメリカ,北をソ連が日本軍の武装解除を担当する案をソ連側も了承。当初38度線に障害物などはなく,米ソの兵士が一緒に食事をしたり,トランプをする光景も見られましたが,当地方針の違いが次第に明確になり,半島内も政治勢力の対立が激化。米国はソ連の反対を押し切って朝鮮独立問題を国連に提訴します。1948年5月に南朝鮮の選挙で李承晩を大統領とsる大韓民国が成立。北朝鮮も8月に選挙を行い,金日成を首相とする朝鮮民主主義人民共和国の樹立を宣言。ソ連は同年10月に撤退を開始,米軍も軍事顧問以外は翌年6月に撤兵を完了します。

 以上である。この本の特徴としては,古代の戦いから始まり,中国,戦国時代,そして植民地戦争,近代の戦争へと歴史の話が推移している。前半の古代の戦いについては,資料が少ないせいか説明がわかりにくく,しかも無理やり現代のビジネスと関連付けしている感が否めない。しかし,それに対して近代の戦争については,資料内容も豊富で単純に歴史を知るというだけでも十分に価値がある。また,ビジネスへの関連付けも説得力のあるものが多かった。以上から,単純に歴史を知るというだけでも,十分楽しめる本だといえる。
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2017年05月07日

最後に読む育毛の本/久田 篤, 佐野 正弥

 年齢とともに,髪の毛も少しずつ少なくなってきたように感じている。何か改善策はないかと,本書を購入した。私が参考になった点は,次の通りである。
・髪が存在する理由,それは暑さや寒さから頭皮を守るためです。身体の体温は,そのほとんど(約80%)が頭部から放出されます。つまり体温は,髪が薄いと,より早く身体から奪われていきます。
・身体の糖化を避けるためには,徹底的に糖質をカットするのではなく,必要最低限の糖質は摂ること。そのうえで不要な糖質はなるべく意識して摂らないようにする。これだけで薄毛を招きやすい原因の体質から抜け出すことができるということです。
。育毛には歯の手入れも欠かせないのです。
・見かけが脂ぎるほど出る皮脂は,完全に食生活の乱れやストレスが原因です。身体に毒素がたまった状態といっても間違いないでしょう。
・ミノキシジルは日本では大正製薬の「リアップ」が日本で唯一のミノキシジル成分の発毛剤として認可されていますが,まず濃度1%タイプは効果があるとは思えません。ミノキシジルは個人輸入により「ロゲイン」等の育毛剤が手軽にしかも比較的安価で購入できます。
・ラウレス硫酸ナトリウム,ラウリル硫酸ナトリウム,ラウリル硫酸アンモニウム,ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩,スルホン酸ナトリウム,これらの成分は,育毛に携わる人たちは絶対に使いません。食器洗剤や洗濯洗剤,ボディーソープで,毎日髪や頭皮を洗っているようなものだからです。
・スキンヘッドにした方は実感しているかもしれませんが,スキンヘッドにすると毛穴が閉じてしまいます。なぜなら髪を剃るからで,その毛穴が何万も一斉に閉じてしまうのだから,頭皮は突っ張ってしまうのです。毛穴が閉じることは,それくらいに大きな影響があるのです。安易な考えてスキンヘッドにはしないほうがいいと思います。
・生活習慣が乱れてくると,身体は栄養分を生命維持に必要な器官だけ優先的に回そうとします。そして栄養分が回らない頭皮下の血管は徐々に縮小していくのです。それが続くと最終的には血管の道が閉ざされ,他の迂回ルートをつくってしまうというわけなのです。
・水以外は身体の浄化ができません。水以外の清涼飲料水は飲まない(お茶,砂糖無しコーヒー,紅茶はOK。ただし水の代わりとしてはカウントしません)。
・スナック菓子,甘いデザート,菓子パン等は身体の害にしかならないのでキッパリ忘れてください。パンケーキ,ラーメンライスなども,炭水化物過多のため,育毛の体質改善にはマイナスです。
・肉には尿素や尿酸を初めとした刺激成分が含まれます。また家畜の屠殺で,家畜が出したアドレナリンが残存するケースも珍しくありません。肉を食べると精がつく,と考えるのは,残留アドレナリンを吸収するため,一時的に高揚した状態になるだけなのです。
・薄毛人口率の高い国は,ファーストフードを始めとした便利食が多い先進国に共通しているという点でしょう。安いファーストフードのハンバーガーなどは,塩分やうま味を感じさせるための化合物がてんこ盛りで,安価な肉が原料となっています。

 以上である。本書は育毛に関する書籍ではあるが,毛髪というのが,身体の健康のバロメーターであるということがよくわかった。そして,薄毛というのは,育毛剤を頭皮に振りかければ解決するなどという単純な問題ではなく,運動や食生活などを根本的に見直す必要があることを,本書は強く訴えている。私自身,本書を読んで大いに反省した。運動は,ランニングや筋トレなど,定期的に行っている。しかし,逆にそれで安心してしまい,食事がルーズになってしまっていた。特に,スナック菓子や甘いものなどを,自分の気分のままに購入しバグバク食べていた。これは本当にいけなかったと,猛省している。そして,それ以外で参考になったのは,飲み物についてである。清涼飲料水は,砂糖が多量に含まれていることは知っていた。しかし,お茶や紅茶も身体の浄化に適さないという記述には,確かに納得させられた。市販の飲み物は,結局のところ,何が入っているのかわからない。余計な添加物が入っている可能性は,昨今ではとても高い。そういう意味では,毒素を極力体内に取り込まないためにも,その辺りはもっとストイックになっても良いのかと今は考えている。また,強力な育毛剤や薬は,副作用があることを忘れてはいけない。安易に高価な育毛剤に手を出すと,それはそれで別の問題が発生する可能性が高い。結局のところ,薄毛の原因はまだはっきりとわかっていない。だからこそ,食事なり,運動なりで健康管理をしっかりとしなければいけないのだ。そういう意味では,薄毛は身体の健康状態が良くないことを示しているサインなのだから,それを契機して,むしろ,今まで以上に健康管理に気をつけるというのが,正しい振る舞いなのではないかと考える。
 以上より,本書は著者の経験や研究をもとに,薄毛に悩んでいる人たちのことを真摯に考えた良書と言える。しかし,これが解決策という答えは本書にはない。むしろ,その解決策は,個々人の健康管理の問題が一因である。本書は,それを丁寧に解説してくれている。
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2017年04月24日

新富裕層の研究――日本経済を変える新たな仕組み/加谷 珪一

 富裕層という言葉は,よく耳にするが,変化の激しい今の時代の中でその意味は大きく変わりつつある。それ自体は認識しているが,その具体的なものは何なのか,自分では全然理解できていなかった。それを理解するために本書を購入した。実際,現在起こっていることが詳細に書かれていて,大変勉強になった。私が参考になった点は,次の通りである。
・愛媛県松山市に本拠をかまえるエイトワンの創業者・大藪崇氏は,市内の道後温泉の宿泊施設の立て直しを皮切りに,今治タオルのショップや愛媛ミカンの販売など,地元・愛媛にこだわった事業を多数展開しています。地域密着型の実業家は珍しくありませんが,大藪氏の場合,事業の元手になった資金はすべて,彼がニート時代に株式投資で作ったという点で,非常に特徴的です。
・米アマゾンは,アプリを使って個人に荷物の配送を依頼するシステムを開発中と言われています。このシステムに登録した個人は,自分が移動する予定の地域に配送予定の商品が存在した場合,宅配業者の代わりにその商品を顧客に届け,配送料をもらうことができる仕組みです。
・日本人の平均年収は300万円台ですから,極論すると,平均的な日本人はほとんど所得税を納めていないことになります(あくまで所得税についてです。実際には地方税などがこれに加わりますので,無税ではありません)。いっぽう,年収が1,500万円を超えると所得税率は急激に上昇し,2,500万円超の人は34%もの税率となってしまいます。所得税について言えば,全体の4%にすぎない高所得者が,税金の半分を納めている計算になります。
・日本のGDPは過去20年間,ほぼ横ばいが続いています。日本にいるとあまりピンときませんが,同じ時期に諸外国のGDPは大幅に拡大しています。米国のGDPは約2.4倍に,フランスはドル換算で約2倍,ドイツも約1.8倍になりました。新興国もすべてを平均すると約2倍になります。つまり,日本は過去20年間に,相対的な経済規模が3分の2から半分に落ち込んでしまったわけです。
・株価がEPS(1株あたりの当期利益)の何倍なのかを示した指標のことを株式投資の世界では「PER(パー)」と呼びます。
・医師やパイロットを例に取り上げましたが,賃金が高く,ロボット化のコスト負担に耐えられる職種は,実はロボットや人工知能との親和性が高い可能性があるわけです。
・日本におけるGDPの大きさは,おおよそ500兆円です。このうち,もっとも大きな割合を占めるのが個人消費で,全体の約6割,金額にして300兆円ほどあります。個人消費の割合は豊かな先進国ほど高くなる傾向があり,米国は7割に達しています。いっぽう,途上国である中国は4割り程度しかありません。
・ラリー・ペイジ氏は,近い将来,人間は忙しく働く必要がなくなると主張しています。ペイジ氏は「私たちが幸せに生活するための資源は,それほど多くない。今の1%程度あれば十分であり,不必要な活動が,過剰な忙しさや環境破壊の原因になっている」と述べており,人工知能やロボット化が進めば,人間は今よりもずっと余裕を持って生活するようになるとの見解を示しています。いっぽう,もう1人のセルゲイ・ブリン氏は,まったく正反対の主張をしています。人間には限りない欲求があり,時間に余裕ができても,人々はそれ以上の娯楽を求めるため,労働力に対するニーズは変わらないとの立場です。
・日本における労働生産性は,OECD加盟34ヵ国中21位と低く,先進7ヵ国では最低です。労働生産性とは,労働によって生み出された付加価値を人数や労働時間で割ったものです。生産性が低いということは,儲からない事業を行っているか,労働が過大であるかのどちらか,あるいはその両方です。
・10年後の社会では,一般的なビジネスマンと起業家の境界線はきわめて曖昧になっているでしょう。会社の従業員としてプロジェクト管理の仕事をしながら,いっぽうでは外部リソースを使ってネット上で事業を運営するような人が出てきてもおかしくありません。実業家まではいかなくても,会社の仕事とは別に自身の特技を生かし,プライベートな時間には,クラウド・ソーシング経由で仕事を請け負うケースも珍しくなくなるでしょう。
・富裕層と呼べるのは純金融資産が1億円からです。その理由は,1億円の金融資産があれば,働かなくても,日本人の平均年収を稼ぐことができるからです。

 以上である。個人的には,著者が述べている未来像は,概ね正しいと感じる。10年後もやはり富裕層が存在し,多くの税金を納め,国を支えていることだろう。そして,大多数の自分のことしか考えない労働者は,どんなにテクノロジーが進化しても,AIが台頭してきても,時代の流れに翻弄され,一生を終えることだろう。しかし,今との大きな違いは,その選択が,その人自身に委ねられるという点だ。主体的に生きるか,それとも受動的に生かされるか。その選択は,その人自身の脳ミソが決める。グーグルの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの二人の話が印象的だ。人は,どこかで満足の到達点に達する生き物なのか,それとも,飽くなき欲求を満たすために,さらなる可能性を追い求める生き物なのか。著者は後者だろうと予測する。私も後者だと感じている。才能のある人も,才能のない人も,その人が持つ欲望の大きさはほとんど変わらないからだ。才能がないからといって,欲望がないとはいえない。いや,むしろ才能のない人のほうが欲求不満だったりする。自己顕示欲,優越感,満足感,自己陶酔感,そういう人間として心地よいものを人間は死ぬまで追い求める。そして,そのためにこの世界が存在しているとも言える。そういう意味では,「進歩」や「進化」は,ただのプロセスでしかないのだ。
 つまり,10年後も,20年後も根本的な人間の「在り方」は,変わらない。人間が,その本質を変えない限り。その存在理由を変えない限り。
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2017年04月23日

ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方/加谷 珪一

 株式投資を始めて数年が経過したが,投資手法が形式化してしまって,新しい挑戦を何も行っていない。そのため,何か自分の投資手法にブレイクスルーする方法はないかと本書を購入した。私が参考になった点は,次の通りである。
・安倍首相は2016年6月1日,2017年4月に予定されていた消費税10%への増税を,2019年10月まで2年半延期すると発表しました。消費税10%への増税延期はこれで2度目となります。
・人口減少社会においては,人々が近い地域に集まって暮らしたほうが,コストが安く効率的です。北海道は札幌に,東北は仙台に,九州は福岡に拠点集約されるというのが自然な流れでしょう。東京も1つの地方と考えれば,周辺地域から都心に人が集まってくることになります。
・米国はもともと孤立主義で,外国に高い関心を寄せる国ではありませんでしたが(モンロー主義=欧米相互不感症を唱えた第5代大統領モンローにちなむ),エネルギー自給がその傾向を加速させているようです。誰が大統領になるにせよ,こうした「引きこもり」的な感覚は,ますます顕著になりそうです。貿易も保護主義的になりますから,日本の輸出産業にとっては逆風となるかもしれません。
・過度に円安が進んだ場合,インフレが一気に進行しますから,実質的な債務は削減されます。つまり,インフレによって預金者から事実上,税金を徴収し,財政の穴埋めが行われるわけです。
・30歳の男性が60歳までに死亡する確率は7%です。また,40歳の男性が1年以内に死亡する確率はわずか0.1%,50歳になっても0.3%です。意外と低いというのが,多くの人の印象ではないでしょうか。病気については,日本の場合,国民皆保険制度が完備されていますから,保険料の滞納がない限りは,原則3割の自己負担で医者にかかることができます。重篤な病気の場合には,高額療養費製による補助もありますから,最終的にはさらに低い自己負担で治療することができるでしょう。
・かつてネットの黎明期には,ネットは既存の媒体から切り離されているので,新しい言論空間が形成されるのではないかと期待する声もありました。しかし現実にはそうはならず,ネットでもオールドメディアでも,同じ情報源によるニュースが流れるという状況になっています。
・ニュースの情報源がネット時代になっても大きく変わらず,特定のマスメディアが寡占的にニュースを提供しているということになると,メディアで流れる情報の質も基本的にあまり変化がないということが想像できます。実際,日本のメディアで流されるニュースは,今も昔もマス向けのものが中心であり,ニッチな情報は取り上げられないという特徴が顕著です。このような情報環境の場合,メディアにおける論調は,総じて予定調和的になりがちです。
・エコノミストやアナリストは,金融機関に所属していることがほとんどですから,基本的に勤務する金融機関の利益に沿った発言を行います。ただ外資系の金融機関は人材の出入りが激しいですから,学者や言論人への転身を狙って,知名度を上げることを最優先する人もいます。
・債券は一般的なレベルの投資家が購入することをあまり想定していません。流動性も低く,いざという時に換金しにくいですから,避けたほうがよいでしょう。それよりも,日本と海外の安定的な主力企業に分散投資する形にしておくことが,ポートフォリオとしては最適です。

 以上である。本書を読んで感じるのは,やはり世の中の変化に対して敏感でなければならないということだ。消費増税延期,人口減少社会,アメリカの保護主義,ネットによる情報社会,そして,投資。それらのものが渾然一体となって,社会は動いている。それらすべてに注意を払いながら,これからを生きていかなければならない。そして,それはある種の自己防衛とも言えるかもしれない。これからの時代は,これまでの流れに従って,他の人々と同様に動いていくよりも,自分自身で考え行動した人の方が成功する。それは,紛れもない真実だ。そのためには,日々学び,考え,自分自身にとっての最適解を探し求めるしかない。コンピュータが発達して,情報化社会になって,世の中がどんなに便利になっても,生きる難しさは,昔と何も変わっていない。私たちが試行錯誤して,その結果新しい時代が切り開かれることも,また同じだ。人間らしさというのは,まさにそこに存在するのだろう。
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2017年03月12日

実践版 三国志 ― 曹操・劉備・孫権、諸葛孔明……最強の人生戦略書に学ぶ/鈴木 博毅

 三国志の物語は,子供の頃から何度も見たり,聞いたりしているが,それが人生戦略書として解説されている。この本を読むと,三国志の歴史の理解が深まると同時に,各登場人物の考え方や戦略が理解できる。私が参考になったのは,次の通りである。
・のちに天下三分の計を発案したことで名高い諸葛孔明。彼はもともと現在の山東省(北京の南方)で181年に生まれます。父は幼い頃(孔明が6歳前後)に死去,叔父の諸葛玄に弟と共に育てられます。しかしその叔父も,孔明が16歳前後の時に死去。
・次の数年,どんなニーズ(力)が社会を支配するのか。次の数年,どんな技術(力)がビジネスを有利に導くのか。その答えを見つけて積極的に力と融合し,新時代の道を切り拓くべきなのです。
・のちに典韋という武人が曹操を守って壮絶な戦死をしたとき,曹操は涙を流します。彼の墓をつくり,曹操は丁寧に弔ったのです。人はその価値を認めてくれる人のために全力を尽くすと言われます。
・兄弟ゲンカで会社を分割した有名な例はダスラー兄弟でしょう。仲良く靴工場を経営していた兄弟は仲違いして,弟アドルフはアディダスを設立。兄のルドルフはプーマを設立して今日に至ります。
・勇気を持ち飛び込む者がいれば,尻込みする者の間抜けさは引き立ちます。別の表現をするなら,人が尻込みをする場面は,飛び込む者には絶好の機会なのです。
・感想で喉がカラカラになる砂漠では,誰もが水を渇望します。そこで自らの水を周囲に分け与える人は,多くの人の心を得るでしょう。地位や肩書を得たいと望み続けて手にした者は,途端にそれがない者を見下します。地位を得ても相手に劣等感を与えない者は,さらに多くの者から応援を得るでしょう。
・読者の皆さんにも,得意な分野が一つならずあることでしょう。しかし,得意と考えている分野ゆえにもっと優れた者を探さないことがあるのです。それが自らの誇りとするものであれば,なおさら修正は難しいものです。劉備の不遇時代は,トップ一人がすべてを兼任できないという現実も示しています。もし彼が,そのまま自分に疑いを持たずに過ごしたらどうなったか?赤壁の戦いは起こらず,三国志の時代は到来しなかったかもしれません。諸葛孔明を三顧の礼で迎えなければ,三国鼎立の策は世に出なかったからです。
。リーダーとは外界の翻訳者だとはよく言われます。集団に,トップが現状を定義して説明することが必要だからです。今,自分たちがどんな状態に置かれて何が求められているのか。何を打破する必要があるか,どんな戦いをすれば栄光と勝利が手に入るか。孫権の言葉には,翻訳者としての自らの手腕に自信が見てとれます。危機を前に,敵の姿を明確に説明できるなら,集団の力を倍加できます。このようなことができるリーダーは,危機さえチャンスに変えてしまうのです。
・本当に優れた者は,時間が経つに従い鋭利な刃物のように洗練されていきます。一方で,なまくらの刀は時間と共に切れ味が落ち,すぐに錆びついてしまうのです。
・ビジネスの重要な契約,履行の約束にも絶対はありません。安易な思い込みが想定外のトラブルにつながることはよくあります。
・組織に所属するとき,個人は強みを武器にできる。人生全体としては,弱みこそが勝敗を分ける。
・英雄たちを見ると,父が苦労した時期,実践で戦い抜いていた時期から一緒に従軍していた世代は,たいてい質実剛健に育っています。しかし成功を収めたあとしか見ていない世代は違います。知識偏重で華美を好み,浪費を気にかけない者に育つ傾向があるのです。
・機会を前に,あなた自身が立たなければ,機会とともに他の誰かに制せられるのです。機会は,あなたが手にしなければ他の誰かがそれを活かします。素敵な異性がいて,あなたが交際を申し込まねば,別の誰かがその人を恋人にします。時節や機会は一瞬です,まばたきほどの時間しかないこともあります。それを手にする勇気こそ,すべての英雄にもっとも共通する貴重な資質なのです。
・人間は誰しも自分が優先するものがあり,それに応じて決断しているということです。過去に,別れた人がいたならば,その人より優先する何かが私たちにあったのです。離れた会社,友人,場所,それらよりも優先したいものが必ず皆さんにあったのです。
・皆さんが今の人生を最高に気に入っているならば,何も変える必要はありません。しかし,必ずしも満足のいく日々でない場合,優先順位を変えることが必要です。
・英雄たちは,一度しかない生涯を全力で疾走して,歴史に足跡を残しました。その姿は,私たちの人生もまた,全力を賭けるに値するものだと教えてくれるのです。
・人は外見と中身が一致しないことも多い。そのため次の八つの方法で確認をする。質問をして返答を聞く,問い詰めたときの対応を見る,スパイを使い裏切りを誘う,ずけずけ訊ねる,金を管理させてみる,異性を近づける,困難な仕事を与える,酒を飲ませて酔い方を観察すること。

 以上である。個人的に,最も参考になったのは,「組織に所属するとき,個人は強みを武器にできる。人生全体としては,弱みこそが勝敗を分ける」だ。これはとても納得できた。いつも表裏のない自分というものを客観的に想定していたが,確かに組織における自分と個としての自分では,有効な技術というのは違っている。組織の中では,他人よりも優れた能力を要求され,それを発揮することで評価される。しかし,個においては,自分の短所や欠点が周囲から注目され,それが個の評価に大きく影響を与える。だから,自分自身の戦略としては,組織の中で能力を発揮し,さらに個においては,弱点を補強するということが重要なのだ。これは,とても重要な視点だと実感した。本書は,三国志の物語を解説しながら,ビジネスの考え方を伝えている。ビジネスに関する内容だけでも,十分説得力のある文章になっているが,それに三国志の登場人物および彼らが取った行動を例示して説明しているので,さらに説得力が増している。
 本書を読んで,ビジネスの考え方が学べただけでなく,三国志という物語自体にとても興味を持つことができた。
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2017年02月11日

株で勝ち続ける人の常識 負ける人の常識/加谷 珪一

 楽天証券で株取引を初めて,3年近くが過ぎた。さらなる自分のスキルアップのために,本書を購入した。私が参考になった点は,次のとおりである。
・プロの投資家最大の弱点は,どんな時でも投資を続けなければならないという点にある。投資信託はいつでも購入や解約ができる商品である。このため,いついかなる時でも,ファンドマネージャーは同じように運用を続けなければならない。「相場の調子がよくないのでしばらく休みます」とは言えないのだ。
・筆者は,ファンダメンタル分析で対象銘柄を絞り込んだ後,買うタイミングを判断する場面においてテクニカル分析を活用するのがよいと考えている。テクニカル分析手法を使えば,その銘柄が,投資家の心理として,買われすぎなのか,売られ過ぎなのか把握できる。
・各国が行っている経済対策は,いかにたくさんモノを作らせ,いかにたくさん消費させるかという2点について働きかけているにすぎない。GDPが大きくなれば,企業の売上げや利益も大きくなり,株価も上昇していくという単純な仕組みだ。
・現在の経済環境において,物価やGDPの横ばいが続くのは,尋常ではない。同じ期間,諸外国がGDPを2倍から3倍に拡大させていることを考えると,日本の特殊さがよくわかる。
・アベノミクスがスタートして以降,経済は順調に回復していると思われているが,GDPの中身を精査してみると,個人消費はあまり伸びていないことがわかる。むしろ,公共事業を中心に公的支出の伸びが多くなっており,政府支出に大きく依存した成長だとわかる。
・金利は今後の物価予想であり,言い換えれば,経済成長予測なのである。具体的に言うと,長期金利は,最終的にその国の名目GDPの成長率に収れんする。もし長期金利が5%になっていれば,その国の名目GDPは5%で成長することが予想されていることになり,株価は何もしなくても5%かそれ以上の上昇が見込めるという解釈が成立する。機関投資家などのプロの投資家は,株式投資を行うにあたって,株価と同じくらい金利の動向に注意を払っている。それは,長期金利の数字に将来の経済成長や株価の動向が色濃く反映されるからである。
・PERは今の利益が何年続くのかを示していることになり,PBRは,これまでの利益の蓄積に対して市場がどう評価しているのかを示していることになる。つまりPBRは純粋な会社の資産価値に対するプレミアムと考えればよい。

 以上である。私の株取引は,単純に現物取引で,下がったら買い,上がったら売るという単純なものである。手法としては,まず自分の気に入った銘柄を探す。銘柄は,自分の実生活に関わる銘柄が多い。そして,テクニカル分析で株価の動きを予想して,安いときに買い,高いときに売るという手法である。企業の財務やビジネス・モデル,市場環境などから,対象企業を定量的に分析するファンダメンタル分析は,ほとんど行っていない。それに近いことは,自分の実生活でこの企業は将来有望であると感じた銘柄を買っているということだろうか。渡しの場合は,応援したい企業に株式投資をしているという感覚が強く,その企業の株を購入することで,その企業を応援することを目的としている。また,配当金や優待なども受けられるメリットもある。しかし,現状のままでは,素人の株取引に毛が生えた程度だ。例えば,株式投資だけで生活するなどというのは,まったく不可能だ。そのために,企業分析の方法なども,より詳しく知る必要があった。だから,PERやPBRの説明は,とても役に立った。さらに,現状の日本の個人消費がまったく上昇していない点,日本のGDPの成長がこの25年間ほとんど見られない点など,諸外国と比べた日本の特殊性もよく理解できた。
 以上より,書いてある内容は,そこまで専門的ではないが,その分株式投資初心者には,とてもわかりやすい内容になっている。
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2017年01月09日

中原圭介の経済はこう動く〔2017年版〕

 著者の分析による経済解説は,非常に説得力があり,納得させられる部分が多い。集められた情報から,極力主観を削ぎ落とし客観的な判断を心がけている著者の姿勢には,感心させられるばかりである。私が本書で参考になった点は,次の通りである。
・同じラテン民族であっても,スペイン人やイタリア人はフランス人よりもずっと勤勉ではないといわれています。基本的にスペイン人やイタリア人は,「その時だけが良ければいい」と考える傾向が強く,過去を振り返って反省をしたり,将来を良くしようと考えたりすることはないそうです。
・中国最大の経済規模で「世界の工場」として知られる広東省(深セン市を除く)が,最低賃金の引き上げを2年間凍結するという方針を2016年になってから決断したからです。企業がこれ以上の賃金上昇に耐えられなくなっているので,賃金の引き上げはさらなる企業の撤退や倒産を招き,社会不安を誘発しかねないと判断したようであるのです。
・日銀はインフレ目標が失敗したという事実を一刻も早く認めて,量的緩和とマイナス金利を改める段階に来ているといえるでしょう。とりわけマイナス金利の副作用によって,日本の経済システムを蝕み始めている事例がいくつも露わになってきているのです。黒田総裁は未だに「金融政策に限界はない」という発言を繰り返していますが,本当の胸の内は「今さら,後戻りはできない」「玉砕は覚悟のうえで,今の金融政策を続けていくしかない」と,意固地になっているとしか思えないのです。
・アベノミクス以前の2010年〜2012年の3年間で,生産年齢人口は132万人減少していたのに対して,アベノミクス以後の2013年〜2015年の3年間では,実に310万人と2倍超も減少していたというのですから,人手不足になるのは当然のことであったと言えるでしょう。生産年齢人口の急激な減少を背景に,2012年以降は失業率が徐々に低下し,有効求人倍率が上昇するのは,初めからわかっていたというわけです。
・2014年秋口から原油価格が暴落したことによって,2015年後半から原油安の効果が円安の悪影響を打ち消すことができたので,実質賃金が下げ止まりを見せ始めるようになり,2015年の実質賃金の下落幅を0.9ポイントに抑えることができました。さらに,2016年に入り,ドル円相場が円高基調に転換することによって,輸入物価も下げに転じるようになってきています。すなわち,国民の生活水準を決定づける実質賃金が押し上げられる環境が徐々に高まっているといえるのです。
・ドル円相場が行き過ぎた円安水準から修正されることにより,個人消費が2015年を底にして,2016年〜2017年には増加に向かうという予測が立てられるというわけです。
・銀行の収益悪化については,長期金利がマイナス圏に突入した影響がはっきりと銀行決算に表れてきていて,銀行はマイナス金利が拡大されることに強い警戒感を示しています。あるメガバンクの役員からは「2016年度以降の収益計画を立てることができない」といった嘆息が聞こえてくるほどなのです。
・日銀の黒田東彦総裁は何を考えているのか,マイナス金利政策の代表的な効果として貸家の増加を挙げているのです。人口減少社会が到来した日本では,すでに全国で820万戸の空き家があり,その半数以上は貸家となっています。ただでさえ今後も空き家が増えていくのは間違いないというのに,今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば,さらに空き家が増えて家賃が大幅に下ることになるでしょう。
・2015年終盤の段階で,2016年〜2017年の間にドル円相場は現時点の購買力平価である97円85銭に回帰するだろうと,あるいは95円〜100円程度の範囲内に戻ってくるだろうという予測が成り立つわけです。
。2016年8月末までの株式市場を振り返ってみると,非常にわかりやすい相場であったと思われます。米国が2015年12月に9年半ぶりに利上げをすることで,円安トレンドが円高トレンドへと転換し,株価が大幅に下落するというシナリオは,過去数年を振り返ってみても殊のほか読みやすいパターンであったからです。

 以上である。本書を読んで,2016年における円高トレンドは,米国の利上げの影響が大きいことがよくわかった。また,アベノミクスによる成果というのは,2015年は円安の悪影響が原油安で相殺され,2016年は,米国利上げによる円高の影響で実質賃金が上昇したということで説明できる。つまり,どちらもアベノミクスの政策自体の効果は,ほとんどなく,その実態は,海外の原油安,米国の利上げなどによって,悪影響が出なかったということに尽きてしまう。結果論だが,もしアベノミクスがインフレ政策として量的緩和を行わなければ,2015年の円安はそこまで進まず,原油安の影響で景気回復に向かった可能性もある。ところが,実際は,実質賃金の上昇も景気回復もない。失業率が減っているのは,団塊の世代が退職したからという影響が最も大きく,これ自体は,アベノミクスの効果ではない。しかし,世間の人たちはそこまで掘り下げて物事を考えないので,日経平均株価が上がり,失業率が減ったということは,アベノミクスは成功していると楽観的に考える。まさに,アベノミクス自体がそれを期待しているわけで,世間の人たちが「景気が良い」と勘違いしてくれることを切に願っているのである。つまり,アベノミクスとは,「株価の上昇」と「失業率の減少」というわかりやすい指標を,一般大衆に注目させることで,「景気が良い」と勘違いさせ,見せかけのインフレを目指しているのである。もちろん,個々にはいろいろやっているはずだが,大局的にはそういうことだ。アメリカの景気上昇と比較すると,日本はまるで静止しているようだ。株価はアメリカに追随しているだけ。日本オリジナルのお金の流れというものは,存在していない。つまり,今の日本は世界の需要を引き起こしていないし,むしろ,どんどん既存の供給を減らしている。そして,マイナス金利などみせかけの政策で市場は混乱している。お金をぐるぐる回しただけで,日本の景気が回復するはずがない。これから10年先20年先の需要を掘り起こすための日本オリジナルの政策がもっと必要なのではないだろうか。そして,政治とはそういう話をする場ではないのだろうか。
posted by J-HASE at 21:28| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

不透明な10年後を見据えて、それでも投資する人が手に入れるもの/岩崎 日出俊

 タイトルに惹かれて本書を購入した。本書は,これから10年がどのように変化していくのか,またそのためにどのような投資が必要なのかを,非常に具体的にわかりやすく説明している。私が参考になった点は,次の通りである。
・現在のグローバル社会は18世紀の社会と決定的に違うところがある。それは,ヒト,モノ,カネ,さらに情報の移動が自由ということだ。仮にグーグルやアマゾンがこれから更に強大化していくというのであれば,われわれはこれらの会社とビジネスをしたり,これらの会社に働き先を見出すことさえできる。もっと簡単な方法は,日本にいながらにしてこれらの会社の株を買うことだ。そうすることで,彼らが描こうとしている成長の波に乗ることが可能となる。
・十河一元の「失敗したって別に命を取られるわけじゃない」との言葉に押されたのかもしれない。私は45歳の時に興銀を辞めて外資系投資銀行に飛び出した。そして今から十数年前,「インフィニティ」という会社を起業し,経営コンサルティングとベンチャー企業への投資という2つの事業を営んできた。終身雇用のレールの上を歩んだ平坦な人生ではなく,その分,失敗もたくさんした。しかし失敗しても立ち上がればなんとかなる。これは私が自分自身の経験から言えることだ。もちろん独立・起業してからは苦労も大奥,土曜も日曜も関係なく働いている。
・公道での900キロメートルにも及ぶ公開走行のノウハウ蓄積を生かし,独アウディは2015年3月10日,「今から2年後の17年には自動運転車を師範する」と発表している。
・「機械を使いこなす人」,すなわちインターネット,コンピューター,ロボットを使いこなすことによって「勝ち組」に残る人たちは,より効率的に仕事ができるようになる。その結果,彼らは,より多くの自由な時間を持つようになる。そうすると創造とか芸術,スポーツの世界がいま以上に重要性を増してくる。
・たまたま長期間のデフレで顕在化しなかっただけだが,現預金にはインフレというリスクが存在する。今後,インフレというリスクが顕在化していくようなことがあれば,そこでは株式投資がリスクヘッジとして存在感を増すはずだ。
・アメリカの株式市場が上昇してきた背景には,アメリカ経済の成長がある。過去20年間で,アメリカのGDPは2.3倍にもなっている。一方,低迷してきた日本の株式市場の裏には,日本経済の停滞があった。過去20年間で,日本のGDPは微減(0.4%減)してきたのである。
・最もハズレがないのはアメリカへの投資だ。ダウ平均株価に連動するETFをおすすめしたい。ダウ平均株価は,P&GやGE,マイクロソフト,コカ・コーラ,アメックス,ボーイングなど,世界のマーケットでビジネスをしている米国オリジンのグローバル企業30社の株価の平均値を取ったものだ。世界市場で事業を展開している会社が多く,世界経済拡大のメリットを取り込めるのも魅力である。
・「特定口座」と呼ばれる口座で「源泉徴収あり」にすれば,株式で得た利益については,原則として確定申告が不要となる。「源泉徴収あり」の特定口座で扱えるのは,従来は日本株だけというところが多かったが,近年はネット証券各社で外国株にも対応するようになってきた。
・手数料についても心配することはない。一般的には「米国株取引は手数料が高い」と思われがちだ。そのため,「いくら米国株が有望だといっても,手数料が高いから,結局は儲けがパーになるのではないか」と考える人もいるかもしれない。しかしネット証券を使えば,6,000円から2,500円程度の手数料しかかからないし,為替手数料も25銭程度。収益が低い日本株を買うよりは,もっと簡単で割安なのが米国株なのである。
・実はアマゾンが初めて黒字になったのは創業してから9年後,上場してから6年後の2003年。それまでは一貫して赤字だったのだ。そして2003年に黒字化を達成した後でも,果敢な投資を行ってきた結果,2012年,14年と赤字に陥っている。もちろんアマゾンは創業以来,今日まで無配である。株主優待といった子供だましのようなものも皆無だ。にもかかわらず,アマゾンの株価は上昇を続け,上場時に比して18年間で実に300倍以上になっている。
・配当金を出すようにしたことで,株価が上がらなくなってしまった企業もある。代表的なのがマイクロソフトだ。1986年に上場して以来,マイクロソフトは17年間にわたって無配を続けてきた。しかし2003年1月,同社はとうとう創業以来,初めて配当を支払うことを宣言。けれども株価はほとんど反応しなかった。むしろ若干ながらも株価は下がってしまった。配当金を出すと宣言したことで,「もう成長が止まった」と一部投資家にみなされてしまったのである。
・PERとは,1株当たりの予想利益に対し,株価が何倍まで買われているかを示す数字で,これが大きすぎるときは,その株価が高すぎると疑った方がいい。
・住宅ローンについても注意が必要だ。アメリカでは,例えば住宅ローンを払えなくなったら,担保である住宅の鍵を銀行に渡せば終わりだ。日本だと,そうはいかない。日本で3,000万円の住宅ローンを組んだが,病気などの事情で払えなくなり,家の鍵を渡したとする。銀行がその家を競売にかけたところ,1,600万円で売れた。すると,残りの1,400万円について,持ち家を失った個人が引き続き責任を持って返済していかなければならない。米国に比べると,かなり厳しい制度と言える。
・日本の公的健康保険制度には「高額療養費制度」というものがあって,医療費として個人が負担しなければならない額の上限が決まっている。たとえ月に100万円の医療費がかかったとしても,自己負担は3割の30万円ではない。月8万7,430円以上の医療費は払わなくいいのである(実際には所得水準によって負担上限額は5区分に細分化されている。右記は年収約370〜約770万円の人の例。住民税非課税者は月3万5,400円が負担上限額となる)。
・最近の若い人たちは向上心が旺盛だが,時として即戦力には繋がらないものにエネルギーを注いでもいいかもしれない。ジョブズの言葉で言うと,己の心の赴くまま(follow your heart)ということになるのだが,将来,点と点が繋がると信じてみる。たとえ繋がらなかったとしても,それはそれで構わないではないか。だからといって,たいした痛手を受けることにはならない。
・五輪景気や五輪相場というのは,五輪が開催される前にピークを迎え,五輪開催時にはすっかり息切れしていることが多い。1964年10月に開かれた東京五輪でも,株価のピークは3年前で,五輪開催時には下落していた。しかも,五輪閉幕後から証券恐慌が発生し,同年には山一證券が赤字となり,翌1965年には,経営危機に陥った山一證券を救うべく日銀特融が発動される異常事態となった。今度の東京五輪は2020年。今から4年後だ。しかしその前に日本は10%への消費税増税(2017年4月)という大きな山を越えなくてはならない。
・グーグルが推し進めている自動運転車の行き着く先は,自動車の台数の劇的な減少である。「なぜ自動運転車を開発したいのか」との問いに対して,ラリー・ペイジ(共同創業者兼CEO)は交通事故を減らしたいと答えたが,同時に「空間を上手に利用し暮らしを豊かにしたい。ロサンゼルスの半分が駐車場や道路というのは問題だ」と述べているのだ。
・戦後70年を経て,日本人は,いつの間にか守ることを大事に考えるようになってしまった。いまや大学生の就職希望先で第1位は地方公務員だという(第7位が国家公務員)。社会全体にチャレンジ精神がなくなってしまった日本に,はたして成長のドライバーとなるイノベーションが起きるのか。本当の日本リスクとはリスクを取らないこと,すなわち起業家精神の喪失にあるのではないか。

 以上である。本書の最大の特長は,具体例が非常に多いという点にある。著者は,数々の具体例を列挙することで,著者本人が伝えたいメッセージを明確に伝えている。そして,挙げる具体例は,非常に説得力があり,著者の意見をさらに強める結果となっている。著者は,チャレンジ精神旺盛で,視野も広く,自ら多くの情報を集め,分析し,それをもとに自分で判断を下している。それに対して,多くの一般大衆は,自ら思考せず,大きな流れに乗っかって人生を過ごしている。さらには,それを「幸せなこと」と自己暗示までかけている始末。せっかく生きているのに,何も情報を集めず,判断もせず,適当に生きている。著者はそういう人たちに警鐘を鳴らしているのである。私自身,サラリーマンで,毎日を忙しく過ごしている。とても悠長に情報を集めたり,分析したりする暇はない。しかし,それは言い訳ではないか。未来の自分に投資することは,「時間がない」などというしょうもない理由で割愛されるべきものではない。むしろ,何としてでも実行しなければいけない必須の課題である。これからは,それを肝に銘じたい。
posted by J-HASE at 16:15| Comment(0) | 自己啓発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大前研一 日本の論点2016〜17

 この本を購入して,すでに1年近くが経過してしまった。ようやく,書評を書く余裕が持てた。本書は,2016年から2017年にかけての展望を著者が述べたものである。私は,著者を尊敬していることもあり,大変参考になった。私が参考になった点は,次の通りである。
・米ドルとユーロをベースにして,カナダドルや豪ドル,ノルウェーのクローネなど,自分で将来性があると見立てた途上国を含めて五種類ぐらいに配分して外貨預金をするのがベストだ。ゼロから始めるなら,給料の半分を外貨預金に充てるくらいの気持ちでなければ間に合わない。
・私が提案しているのはラストワンマイルの配送を一社に集約するデリバリー組合の設立だ。新聞から郵便物から宅急便まで,入れ代わり立ち代わりに家庭にものを届ける業者がやってくるが,目的地に届ける”最後のワンマイル”のデリバリーを一社に集約できれば,物流の効率は飛躍的に向上する。地区ごとに宅配会社のうちの一社を決めて,各社はそこに配送する。そこから先は,その地区を任された会社が「右代表」で各家庭に届ける。顧客にとっても,何回もベルを鳴らされないで済むし,郵便受けまで何回も足を運ぶ必要がなくなる。そうした仕事の創意工夫が足りないために,日本全体で人材の適正配分ができていない部分が数多く残されている。これが解消されていけば,当分,日本は人手不足にならない。
・私は水素エネルギーを分散型の燃料として利用するのは反対だ。やるのであれば集中型にして,水素発電で電気を作って,電気の形でハイブリッドカーや電気自動車(EV)に供給していく。水素そのものを分散して,車のような移動体に搭載するのは危険が多すぎるのだ。水素を社会インフラにするのに反対しているわけではない。時期尚早,と言っているのだ。
・イラクで暮らしている先住民族のクルド人の数は,約500万。彼らはイラク戦争後に北部で自治権を与えられて,同地域の石油権益も自分たちで押さえるようになった。さらに今回のISIL侵攻による国内の混乱で独立の機運が高まり,クルド人国家独立の是非を問う住民投票の実施に向けて動き出したのだ。
・クルド人は国家を持たない世界最大の民族であり,トルコには約1,400万人のクルド人がいる。クルド人自治区の独立問題が中東の大国トルコに波及すれば,中東情勢は大混乱に陥る。まさしく「国家とは何か」という問題を呼び起こしかねない。ヨーロッパでもスコットランドに続いてスペインのカタルーニャで独立の是非を問う住民投票が計画されるなど,中央政府からの分離独立を目指す動きが活発化し,方々で国家のあり方が問われている。
・金利をゼロにした後に打てる手は市中に金をばらまくしかない。アベクロ・バズーカなどが典型的なもので,経済が上向かないのは230兆円の余資を持つ法人も1,600兆円の金融資産を持つ個人も金を使おうとしないからだ。つまり金はもともと市場にあふれかえっており,それを使おうという気持ちにならない心理,すなわち「低・欲望社会」の問題を解決しない限りいくらマクロ指標をいじってみても景気は上向かない。

 以上である。個人的には,クルド人自治区の詳細については,本書で初めて知ることができた。水素社会についての問題点も,まさにその通りと感じる。外貨預金については,将来的な視野に入れているが,現状の円安状況を考えるとなかなか難しいのが現状だ。本書は,発売から1年以上が過ぎているが,世界の現状を知り,将来を考える上では,非常に参考になる本である。
posted by J-HASE at 13:34| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする