著者の伝えたいことを,私は次のように理解した。まず,これまでのマスメディアは,弱者の立場に立ち,それを社会に対して大々的に喧伝することを,主たる目的としていた。しかし,それでは,弱者の立場から自分たちを見ることにより,自分達の存在を再認識している行為(著者はこれを<マイノリティ憑依>と呼んでいる)をしているか,あるいは,弱者の存在を傍観し,エンターテイメント程度のものとして見過ごす傍観者にしかなれない。しかも,これはマスメディアに限らず社会全般(つまり個々の人間)にも言えることである。そして,そのような行為は,結局誰も幸せにすることはできない。しかし,現代はインターネットが普及し,一人ひとりが個々の情報を発信することが可能となっている。だから,一人ひとりが「当事者」として自分の情報を自分の言葉で発信していかなければならない。そして,そうすることが,今の社会をより質の高い世界へと変えていくことになる。これまでは,個々の人間は,自分で情報を発信することができず,マスメディアの情報を半信半疑で認識することしかできなかった。しかし,そのような不気味な世界は終わりを告げ,まさにこれから個々の人間が,自分たちの本当の世界を語ることが可能となっている。
そして私は,この本を読みながら映画「マトリックス」を想起した。まさに著者は人々がこれまで常識だと思っていたことが「間違っていた」と指摘しているのである。人々に「ネオになれ」と言っているのである。これまでの社会のあり方と,これからの社会のあり方は,驚くほどに変わる。それを,著者は示しているのである。それに気がついたとき,私は本当に自分自身で驚いた。まさに佐々木氏が言うとおりだと。それは,最終章に至るまでの長い長い具体例を読んだからこそ,感じた思いでもあった。「なるほど,著者はこれが言いたかったのか」と最後の最後にようやく理解できた。本当にすごい本である。佐々木氏の文筆力には,本当に敬服する。
さらに言えば,4月に発売されたTM NETWORKのシングル「I am」の詞が,そしてもっと言えば,livetune feat. 初音ミクの「Tell Your World」の詞が,この本の伝えようとしていることと恐ろしいくらいシンクロしていることに,私は時代の流れを感じずにはいられなかった。

